
コソヴォ北部セルビア系自治体でセルビア系市長らが就任し職務を開始-行政部門の政治任用者を即時解任へ
12月5日、コソヴォ北部のセルビア系住民が多数を占める4つの自治体(北ミトロヴィツァ、ズヴェチャン、ズビン・ポトク、レポサヴィッチ)において、新たに選出されたセルビア系の市長らが就任宣誓を行った。これは、2022年後半以降続いていたセルビア系住民によるコソヴォ行政機関のボイコットと、それに伴う政治的空白および緊張状態を経て、同地域の権力が実質的に再びセルビア系政治勢力の手に戻ったことを意味する。
今回就任したのは、セルビア政府の支援を受ける政党「セルビア人リスト(Srpska Lista:SL)」所属の候補者たちである。北ミトロヴィツァではラドイェヴィッチ(Milan Radojević)氏、ズヴェチャンではミロヴィッチ(Dragiša Milović)氏、ズビン・ポトクではペロヴィッチ(Miloš Perović)氏、レポサヴィッチではトディッチ(Zoran Todić)氏がそれぞれ市長の座に就いた。
宣誓式は法的手続きに則り、コソヴォ国旗とコソヴォ大統領の肖像画の前で執り行われた。コソヴォ政府の地方自治行政大臣代行であるクラスニチ(Elbert Krasniqi)は、SNSを通じて「すべてはコソヴォ共和国憲法の規定に従い、秩序正しく行われた」と評価した。
一方で、式典会場には出席者によってセルビア国旗が持ち込まれ、ズビン・ポトクの議会議員が新市長にセルビア国旗を手渡すなど、民族的なアイデンティティを強く示唆する場面も見られた。ラドイェヴィッチ市長は就任に際し、「暗い章を共に閉じ、市民と自治体の利益のために働く時が来た」と述べ、多民族の共存と繁栄を目指す姿勢を強調しつつ、自身のInstagramアカウントへの投稿においては「セルビア人の強い意志のおかげで、本日、北ミトロビツァはセルビア人の手に戻ってきた」と述べた。
就任後の初動として、新市長らは直ちに組織の刷新に着手した。コソヴォのセルビア語メディア「KoSSeV」の報道によると、4市長は就任に伴い、前任のアルバニア系市長時代に政治的に任命された自治体各局の局長(ディレクター)全員を解任する決定を下した。SLはメディアの取材に対しこれを認め、新たな局長の任命は数日以内に行われる見通しであるとしている。
また、新市長らは12月8日に駐コソヴォ欧州連合(EU)事務所長であるオラフ(Aivo Orav)EU特別代表と会談を行った。この席で市長らは、庁舎内の執務室が荒廃しており、コンピュータ機器や公文書、基本的なオフィス家具が欠如しているなど、行政機能の維持に支障をきたす極めて劣悪な状態を引き継いだと報告した。オラフ特別代表のX公式アカウントへの投稿によれば、彼らは、法に基づき市民の最善の利益となる決定を下すため、現状の詳細な法的および財務的な分析を行う必要性を強調し、地方自治体の機能安定化に向けたEUの支援について意見交換を行ったとされている。
Meeting 4 new northern mayors in Zvečan/Zveçan tdy, I welcomed the smooth handover of local gov. in line w/🇽🇰law.
— Aivo Orav (@AivoOrav) December 8, 2025
I reiterated the need for constructive engagement between central&local authorities and 🇪🇺's support for realizing non-majority community rights as per🇽🇰Constitution. pic.twitter.com/9V2woJwD09
コソヴォ北部では、2022年にセルビア系住民がプリシュティナ(コソヴォ政府)の政策に抗議して行政機関から集団辞職して以降、2023年の選挙で当選したアルバニア系市長が行政を担っていた。しかし、投票率が極めて低かったこの選挙結果に対するセルビア系住民の反発から抗議デモや暴力事案が発生し、NATO(北大西洋条約機構)主導の平和維持部隊(KFOR)との衝突で多数の負傷者が出るなど治安が悪化していた経緯がある。
SLは以前のボイコットについて、国際社会の関心を引く成果はあったものの、制度からの撤退自体は誤りであったと認めている。今回のセルビア系市長の復帰は、対話による正常化への期待を持たせる一方で、毀損された行政機能の回復という実務的な課題も浮き彫りとなっている。
(アイキャッチ画像出典:WhiteWriter via Wikimedia commons, CC-BY SA 3.0)



































































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