コソボ北部における衝突に関する主要国の反応

5月29日にコソボ北部ズベチャンで発生した、セルビア人住民と北大西洋条約機構(NATO)主導のコソボ国際安全保障部隊(KFOR)との衝突によって負傷者が発生した事態についての、主要国の反応を以下にまとめた(いずれも強調表示は当サイトによるもの)。

ブリンケン米国務長官声明(5月30日)

我々はすべての当事者に対し、緊張を緩和するための行動を直ちにとるよう求める。 米国は、NATO主導のKFOR部隊、法執行機関、ジャーナリストに対する昨日の容認し難い暴力を非難する。

コソボ政府が自治体庁舎への立ち入りを強制したことは、緊張を急激かつ不必要に悪化させたクルティ首相とその政府は、選出された市長が市庁舎外の代替地で移行期の職務を遂行することを保証し、周辺から警察部隊を撤退させるべきである。 ブチッチ大統領とセルビア政府は、セルビア軍の警戒態勢を引き下げ、コソボのセルビア人住民に対し、KFORへの挑戦を止め、さらなる暴力を控えるよう求めるべきである。

コソボとセルビアの双方は、関係正常化のためにEUが促進する対話に直ちに参加することを再開すべきである。

https://www.state.gov/condemning-violence-against-kfor-and-escalatory-actions-in-northern-kosovo/

ボレルEU共通外交安全保障政策上級代表声明(5月30日)

EUは、ここ数日に見られたコソボ北部での暴力を最も強い言葉で非難する。文民、メディア、法執行機関、KFOR部隊に対する暴力行為は絶対に容認できないものであり、非常に危険な状況をもたらしている。

我々EUは、コソボの平和と安定のためにその任務を遂行するNATOのミッションであるKFORを断固として支持する。

私は、クルティ・コソボ首相及びブチッチ・セルビア大統領と一晩中接触してきた。クルティ首相とは今朝も話した。私は両者に対し、緊張を即座に無条件で緩和するための措置を緊急に講じるよう求めた。これ以上の一方的な行動は避け、平静を取り戻さなければならない。

第一段階として、コソボ当局がコソボ北部の市庁舎における警察の活動を停止し、暴力的なデモ隊が立ち去ることを期待する。私は、両首脳との関与を続けていく。

EUは、両当事者が責任を持って行動し、すべての市民の安全と安心を保証し、関係正常化への道に関する新しい合意の実施に道を開くコソボ北部の状況に対する持続可能な解決策を見つけるために、EUが主導する対話に直ちに関与することを期待する。

そのために、私は、ミロスラフ・ライチャークEU特別代表の支援を受け、緊急のハイレベル対話会議の開催に取り組んでいる。

私はチャールズ・フリースEEAS副事務局長(平和・安全保障・防衛担当)にコソボを訪問するよう要請した。フリース副事務局長は、コソボにおける第二の治安組織であるEU法の支配ミッション(EULEX)と共に、現場の状況について報告してくれるだろう。

EU加盟国は、情勢について報告を受け、既に提案された緊張緩和へのステップについて当事者が抵抗を続ける場合に取りうる措置について議論している

当事者は、欧州における実りある地域協力と安全保障に貢献し、過去の遺産を克服することが期待されている。これまでに多くの暴力が見られていた。もうたくさんである。今日既に、欧州にはあまりにも多くの暴力が存在する。これ以上の紛争は許されない。

https://www.eeas.europa.eu/eeas/kosovo-statement%C2%A0-high-representative-josep-borrell-ongoing-confrontations%C2%A0_en

ロシア外務報道官談話(5月30日)

コソボ・メトヒヤ自治州における緊張の高まりが続いている。セルビア人が居住する同州の北部地域で最近勃発した騒擾は、致命的に危険な水準に達している。

ズヴェチャン、ズビン・ポトク、レポサヴィチにおける危機は、冷静な妥協による解決にかなり適していたが、KFORの「平和維持部隊」にとってはあまりにも厳しいものであることが判明した。KFORはプロ意識の欠如を示しただけでなく、不必要な暴力の原因となり、緊張を高める要因になった。その結果、コソボ人の虐待から地元の多数派であるセルビア人を守るべきだった者達が、プリシュティナの排外主義的な願望の側に立ち、自治体当局であるとと宣言して市庁舎に住み着いたコソボ・アルバニア人身辺警護人として、実際にテロの共犯者となってしまった。その結果、さらに数十人が入院し、中には重篤な状態に陥った人もいた。

国連安保理決議1244号の条項のうち、コソボにおける軍事的プレゼンスに関する部分のみを真摯に受け止める欧米の選択的な態度は、KFORの機能に対するNATO内の深い誤解を生んでいる。それは、宣言された地位中立的アプローチとは正反対のものであり、長い間フィクションに成り下がっていた。実際、NATO部隊は、コソボのセルビア人を本当に保護したことはなく、コソボ・アルバニア人の過激主義の横行とセルビア人に対する民族浄化という欠陥だらけの現状を維持することに奉仕してきた。このような状態で、セルビア人の信頼や、ましてや忠誠心を語ることは不可能である。

今、プリシュティナにいる自分たちの被後見人(当サイト注:コソボ政府を指しているものと思われる)の自制心のなさに大げさに憤慨し、秩序を取り戻すよう必死で呼びかけようとしている欧米5カ国は、北部の4つのコミュニティにおいて誰も代表しないアルバニア人の「市長」を座らせた結果を事前に計算していたはずである。しかし、欧米が本当に平和と安定を考えるのであれば、4月23日に行われた偽の市長選挙の歴史を覆すことはまだ遅くはない。クルティ首相とその取り巻きに対して影響力を行使するのは難しくない。米国やEUが大好きな制裁手段で十分であるし、今回ばかりはそれが正当化されるだろう。そして、欧米は、またもや「自体を作歌させた」と非難される危険を冒してまで、完全な戦闘態勢の軍をコソボとの行政境界線に向けた送らざるを得なかったベオグラードを挑発することを控えることができたはずである。

我々は、欧米がその誤ったプロパガンダを最終的に沈黙させ、コソボでの事件を、武器を手にすることなく平和的に自分たちの正当な権利と自由を守ろうとする絶望的なセルビア人のせいにするのをやめるよう求める。このような場合、真に罪ある者を探すために、調停者である米国とEUは鏡を見る勇気を持つべきである。

新しく任命された市長を一時的に市庁舎から移動さ、他の施設に「再定住」させるという米国のアイデアのような中途半端な方法ではなく、事態の激化を解消するための決定的なステップが必要である。10年前にブリュッセルの保証の下でベオグラードとプリシュティナの間で交わされた文書協定で想定された、本来の形でのコソボ内のセルビア人自治体共同体の設立が現在でも最優先の課題である。これは、この地域の安定と安全を確保するための唯一の機会である対話のための重要な条件である。

https://mid.ru/en/foreign_policy/news/1873070/

中国外交部報道官談話(5月31日定例記者会見における発言)

中国とセルビアは包括的な戦略的パートナーであり、鉄壁の友人である。中国は、セルビアの主権と領土保全を維持する努力を常に支持している。現在の状況下では、緊張の激化を避け、西バルカン地域の平和と平穏を守る必要がある。

中国は関連する事態の動きに高い関心を寄せている。我々は、主権と領土保全を守るセルビアの努力を支持し、プリシュティナ暫定機関による一方的な行動に反対し、セルビア人多数派の自治体による連合/共同体の設立という義務が果たされることを希望する。 NATOは、関連国の主権と領土保全を尊重し、この地域の平和に真に貢献する必要がある

https://www.fmprc.gov.cn/eng/xwfw_665399/s2510_665401/2511_665403/202305/t20230531_11086783.html

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