ジュカノビッチ大統領がレキッチ議員の首班指名を拒否し、前倒し総選挙実施を提案:与党側は大統領弾劾手続きを発議
9月20日、ジュカノビッチ(Milo Djukanović)モンテネグロ大統領は、与党側の議会主要3会派が新首相候補者として指名したレキッチ(Miodrag Lekić)議員への首班指名を拒否し、代わって議会解散と前倒し総選挙の実施を提案した。これに対し与党側は、ジュカノビッチ大統領が憲法違反を犯したとして、大統領弾劾手続きを発議した。
モンテネグロでは、本年8月19日に内閣不信任案が可決されたことを受け、憲法上の規程に従い、9月19日までに議会(定数81)の過半数の支持を得た首相候補者が指名されない場合には前倒し総選挙実施が必要とされていた。内閣不信任案可決後、2020年の総選挙でジュカノビッチ大統領が党首を務める社会主義者民主党(DPS)を破り独立後初の非DPS政権を樹立した当時の与党連合である民主戦線(Democratic Front)、「平和は我々の国(Peace is Our Nation)」、「黒と白(In Black and White)」のモンテネグロ議会(定数81)主要3会派は合同で新首相候補者を選出することに同意し、憲法規定上の締め切りである9月19日に、「平和は我々の国」会派所属のレキッチ議員を新首相候補者とすることで合意したと発表していた。
しかし、19日の時点では「黒と白」会派の一角を占める統一改革運動(URA)がレキッチ議員の指名合意について正式に署名をしておらず、民主戦線のマンディッチ(Andrija Mandić)代表がジュカノビッチ大統領に対し3会派を代表してレキッチ議員の指名を書面で報告したのは、翌20日になってからであった。
ジュカノビッチ大統領は20日に発表した声明の中で、「現在の政治状況下で最適の解決策は選挙の実施である。新政権樹立についての合意は成立しておらず、早期の選挙実施によってのみ完全な能力と権限を備えた政権が樹立できる。」と述べた。
これに対し主要3会派側は22日に、ジュカノビッチ大統領が大統領の責務を規定した憲法95条に違反したとして、大統領弾劾手続きを発議した。憲法98条によれば、議会は25名以上の議員の署名に基づき、憲法違反を理由とした大統領弾劾手続きを発議出来るとされているが、実際の弾劾動議可決にあたっては、憲法裁判所による判断を仰ぐ必要があると規定されている。
弾劾手続き発議を受けてコメントを発出したジュカノビッチ大統領は、「3会派は憲法規定上の締め切りまでに首相候補者を提案することに失敗しており、故に自分は憲法に違反していない。憲法規定に従い、前倒し総選挙を実施できるよう、議会を解散する必要がある。」と述べた。
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