コソヴォ政府が最低賃金の倍増を閣議決定

8月28日、コソヴォ政府は最低賃金の大幅な引き上げを閣議決定した。新たな最低時給は2ユーロとなり、フルタイム労働者の場合、グロスでの月給は350ユーロとなる。

財務省のFacebookアカウントへの投稿によれば、現在の最低賃金は、35歳未満のフルタイム労働者でグロスの月給が130ユーロ、35歳以上65歳未満で同170ユーロとなっており、今回の最低賃金引き上げは約2倍の引き上げとなる。また、これまで設けられていた年齢による最低賃金の区分が撤廃され、年齢に関わらず一律の最低賃金が適用される。新たな最低賃金規定は10月1日より施行予定とされている。

コソヴォ財務省Facebookアカウントより

クルティ政権は、2022年に最低賃金引き上げを画策していたが、野党の反対及び憲法裁判所での違憲審査のために2年以上賃金引き上げの実現が遅延していた。報道によれば、クルティ(Albin Kurti)首相は閣議において、「この遅れによって、当初の目標水準であった月給264ユーロという水準はもはや時代後れで不十分なものとなってしまった。そのため、政府は現在の社会と経済の状況に適合した新たな賃金水準を定めた」と述べたとされている。

ムラティ(Hakuran Murati)財務大臣は、この最低賃金引き上げによって15万人以上の労働者が利益を得るだろうと述べている。

一方、コソヴォ解放軍(KLA、セルビアとの武力紛争の当事者であった武装組織)退役軍人協会は、この法改正への反対を表明している。同協会によれば、退役軍人法では「KLA退役兵に対する恩給の額は最低賃金水準を下回ってはならない」と規定されている一方で、今回の最低賃金法改正では、恩給額を「財政状況や物価水準を考慮し、財務省の提案に基づき政府が決定する」とされており、恩給額が最低賃金と同様に引き上げられるか不透明となっている。

また、政府は最低賃金引き上げと同時に所得税制度も改正しており、これまでは月給80ユーロ以上の所得に対して課税されていたものが、月給250ユーロ未満の所得については非課税となった。

コソヴォは来年2月に任期満了に伴う議会総選挙を実施することが決定しており、コソヴォ内外の専門家からは、今回の最低賃金引き上げや所得税制改正は、選挙を前にしたクルティ政権の有権者に対するアピールの一環であるとの見方も示されている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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