マクロン仏大統領がセルビアを訪問：ラファール戦闘機調達契約等12の二国間文書に署名
8月29日、フランスのマクロン（Emmanuel Jean-Michel Frédéric Macron）大統領がセルビアを訪問した。
ベオグラード到着後、マクロン大統領はセルビア宮殿（Palata Srbija）においてヴチッチ（Aleksandar Vučić）セルビア大統領との首脳会談を行い、両大統領はその後、セルビア宮殿において行われた二国間合意文書の署名式に出席した。
署名された文書の中には、セルビア政府によるフランス製多用途戦闘機「ラファール（Rafale）」12機分の購入契約も含まれている。セルビア国防相発表によれば、ラファールの購入契約は、ガシッチ（Branislav Gasić）セルビア国防大臣と、ラファールの製造元であるダッソー・アビアシオン（Dassault Aviation）社のトラピエ（Éric Trappier）CEOの間で署名された。調達費用は27億ユーロとされている。
セルビア空軍は現在14機のミグ29戦闘機を保有・運用しており、このうち6機は2017年にロシアより供与されたものであるが、今回の調達契約に基づいてラファールが供与された後は、これらのミグは段階的にラファールによって置き換えられていくものと見られている。
セルビア政府発表によれば、ラファール調達契約を含め、セルビアとフランスは次の12の二国間合意文書に署名した（強調表示は当サイトによるもの）。
- セルビア政府とフランス開発庁（AFD）の相互協力に関する覚書
- セルビアにおける優先プロジェクト実施に関する協力合意第二付属文書
- 廃棄物管理に関するセルビア環境保護省、AFD及びパリ地域廃棄物管理センター間の三者間パートナーシップ協定
- 農業・食品分野に関する協力に関する意向表明書(Statement of Intentions)
- ヴェリコ・セロ下水処理施設整備事業に関するセルビア政府とスエズ社及びヴァンシ社間の利害関係合意(Agreement of Interest)
- 重要鉱物資源の研究と開発におけるセルビア政府と戦略的鉱物資源に関する仏省庁間代表団との間のパートナーシップに関する意向表明書
- セルビア政府とフランス電力間の了解覚書の一部としてのセルビアにおける民生用原子力プログラム開発の可能性評価に関する契約書（Letter of Engagement）
- ラファール戦闘機及び関連物品・サービスの調達契約
- セルビア地域腫瘍放射線研究所の発展における協力に関する趣意書（Letter of Intent）
- 科学、研究、イノベーション分野における協力に関する意向表明書
- 観光分野における協力に関する意向表明書
- セルビア送電会社（Elektromreža Srbija）とAFD間の融資協定
この中には、民生原子力プログラム推進に関するものも含まれている。セルビアは、旧ユーゴスラヴィア時代に規定された原子力利用に関するモラトリアムを事実上撤回し、原子力発電所建設に向けた取り組みを進めている。今年6月には、原発建設に向けた技術評価事業の入札を公示しており、また同月にはフランス電力（EDF）代表団が原子力事業分野での協力可能性について協議するためにセルビアを訪問している。
署名式後の共同記者会見において、ヴチッチ大統領は、「マクロン大統領との間では、あらゆる戦略的重要事項、仏・セルビア間の二国間関係、セルビアのEU加盟交渉といった議題に加え、世界と欧州の戦略的関係について長時間議論した」と述べ、マクロン大統領に対する謝意を表明した。
ラファール調達契約について、ヴチッチ大統領は、「12機の新たな戦闘機はセルビア軍の作戦能力の大幅な向上に寄与する」と述べつつ、今後のセルビアと仏の二国間軍事協力の強化についての期待を示した。
マクロン大統領は、仏・セルビアの二国間経済関係について、「セルビアの居るべき場所はEUである。EUは強いセルビアを必要としており、同時に、セルビアは強く独立して自身の利益を守る事が出来るEUを必要としている」と述べた。マクロン大統領はまた、「過去5年間で仏とセルビアの関係は新たな段階に達しており、ベオグラード地下鉄整備事業やニコラ・テスラ空港近代化事業といった重要かつ長期的なインフラ案件において、仏企業が主導的な役割を果たしている」と指摘した。
マクロン大統領によれば、AFDはこれまでに6億ユーロの資金をセルビアでのプロジェクトに投じており、仏は今後もAFDを通じた対セルビア協力を継続する意向であるとされている。
マクロン大統領は、30日までセルビアに滞在する予定となっている。
（アイキャッチ画像出典：セルビア国防省）
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