中国とのFTAはセルビアに何をもたらすのか

7月1日にセルビアと中国との自由貿易協定(FTA)が発効した。セルビア政府は、このFTAがセルビアに多大な利益をもたらすものだと盛んに喧伝しており、またセルビアと中国の強固な政治関係を象徴するものだとしている。しかし、実際のところは、セルビア経済にとってこのFTAがもたらす利益はさほど大きいものとは言えない。むしろ、このFTAの意義はその政治的な側面にあると考えられる。

伝統的な経済理論によれば、自由貿易は生産の専門化をもたらし、参加するすべての国々に利益をもたらすとされている。従って、関税やその他の貿易障壁は撤廃されるべきだとされる。自由貿易による利益と損失は経済全体に均等に分配されるわけではないが、総じて利益が上回る。国内の消費者は海外からのより安価で高品質な輸入製品を入手することができ、安価な輸入部品を使用する新たな産業がより速く発展し、絶対的または比較優位を持つ産業の輸出が増加する。


セルビアのような小国経済にとって自由貿易は特に重要と言える。アメリカ、EU、中国、そして日本のような大規模な国内市場を有する国々は外国市場への依存度が低い。一方、セルビアのような小国は、国内で多様な製品を合理的なコストにおいて生産することは事実上不可能であるため、専門化せざるを得ず、海外との貿易から得られる利益はより顕著なものとなる。
したがって、セルビアと中国の自由貿易協定は両国経済間の人為的な障壁を取り除くものとして基本的にはセルビアにとって歓迎すべきものではある。特に、セルビアが世界貿易機関(WTO)の加盟国ではないことことから、これまでセルビアと中国の貿易は双方の高関税によってその潜在性を阻害されてきており、今回のFTAによってその障壁はかなりの程度取り除かれると思われる。

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