ベオグラードでヤダル鉱山開発計画に反対する大規模抗議デモが開催される

8月10日、セルビアの首都ベオグラードで、英豪系鉱山大手リオ・ティント社による、セルビア西部ヤダルにおけるリチウム鉱山開発プロジェクトに反対する数万人規模の抗議デモが行われた。参加者たちは、リオ・ティントによる25.5億ドル(23.4億ユーロ)規模のリチウム鉱山プロジェクトの再開に反対し、環境への懸念を訴えた。

セルビア公共放送RTS等が公開した映像によると、ベオグラード中心部のテラジエ広場に集まったデモ参加者達は「ヤダルは掘らせない」「リオ・ティントは出ていけ」などと叫んでいた。複数の報道によれば、約4万人がこのデモに参加したとされている

出典:AP通信Youtubeチャンネル


これに対しリオ・ティント社は声明を発表し、デモの演説者たちが主張するプロジェクトの環境や人体への破壊的影響を否定したうえで、同社が既に公表している環境影響評価の草案に示された内容は、こうした環境への悪影響を覆すものであると述べた。


この抗議デモを主導したのは、セルビア政府に対しリチウムの探査と採掘の禁止を求めていたセルビア国内の環境保護団体やNGOのグループであった。この主催グループは、政府に対し、セルビア国内でのリチウム採掘を恒久的に禁止する法律を8月12日までに制定するよう求めており、その期限が到来したことを受けて抗議デモが実施された。

テラジエ広場でのデモ後、一部の参加者はベオグラードの2つの鉄道駅とベオグラードの主要交通路であるガゼラ橋を封鎖した。


翌11日の記者会見で、セルビアのヴチッチ(Aleksadar Vučić)大統領は、このデモが自身と政府の打倒を目的とした政治的動機によるものだと主張しつつも、参加者の大半がヤダル鉱山開発計画に対して真摯に懸念を抱く一般市民であることを認めた。
ヴチッチ大統領は、デモの大部分は平和的だったものの、鉄道や道路の封鎖は「少数派による多数派へのテロ行為」に当たるとした。また、ヤダル鉱山開発計画の是非を問う国民投票実施の可能性に言及し、リオ・ティントにはまだ採掘許可が出ておらず、そのプロセスには数年かかる可能性があると述べた。
ダチッチ(Ivica Dačić)内相によると、デモ参加者のうち、犯罪行為の合理的な疑いがあるとして14人が取り調べのため連行された。また、RTSの報道によれば、デモに参加した3人の環境活動家が騒乱罪の容疑で拘束された。


セルビア政府は7月、環境保護団体の抗議を受けて2年前に凍結していたヤダルにおけるリチウム・ホウ素鉱山プロジェクトの許可をリオ・ティント社に対し再交付した。

また、同社への許可再交付直後には、セルビアはEUとの間で、リチウム開発に関する戦略パートナーシップ合意を結んでいる。

これら一連の動きを受け、セルビア各地ではヤダル鉱山開発に反対する抗議集会が相次いで開かれている。


ヤダル鉱山開発計画に対して高まる反対の声を受け、セルビア政府は10日、ヤダル・プロジェクトに関する誤情報の拡散を防ぐ目的で連絡センターを開設したと発表している。


リオ・ティント社は2004年に、ヤダル渓谷にちなんで名付けられたヤダライトと呼ばれる鉱物の鉱床をセルビア西部で発見した。同社の発表によれば、完全に稼働した場合、ヤダル鉱山は年間約5.8万トンのリチウムを生産し、電気自動車のバッテリーやエネルギー貯蔵に適した品質のリチウムを供給できるとされている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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