コソヴォ警察が北部のセルビア系郵便局を閉鎖:欧米はコソヴォ政府を非難

8月5日、コソヴォ警察は、セルビア人住民が多数派を占めるコソヴォ北部地域において、セルビア国営のセルビア郵便(Pošta Srbija)が運営する9カ所の郵便局を閉鎖した。

コソヴォ内務省は、この措置はコソヴォ電信・郵便規制庁(ARKEP)からの「北部において違法かつ無登録の郵便事業者が存在している」との通報に基づくものであり、また2月に施行されたコソヴォ中銀規則の執行のためであると説明している。

コソヴォ中銀は、コソヴォ国内でのユーロ以外の通貨の使用を厳格に禁じる規則を今年2

月に施行している。

この中銀規則を根拠に、コソヴォ警察は5月に、北部においてセルビア郵便貯金銀行(Post Saving Bank/Poštanska štedionica)の支店6カ所を今回と同様に閉鎖している。

今回の郵便局閉鎖は、5月に続く二度目の強硬措置となっており、5月の際と同様に、セルビア人住民及びセルビア政府からの強い反発を招いている。

セルビア政府発表によれば、セルビア政府コソヴォ事務所のペトコヴィッチ(Petar Petković)長官は、「これはコソヴォからセルビア人を追放しようとするアルビン・クルティ(コソヴォ首相)によって引き起こされた新たな危機である。クルティはセルビア人の基本的人権を否定し、彼らを脅し、セルビア人の通常の生活を妨げようとしている。プリシュティナによるこの行動は、2015年に(ベオグラード・プリシュティナ間対話を通じて)成立した通信に関する合意に対する残忍な違反である。この合意の第5条では、両当事者は対話の最終段階において郵便サービスについて議論することが合意されていた」と述べている。

一方で、2月の中銀規則施行や5月のセルビア郵便貯金銀行閉鎖の際にコソヴォ政府を批判していた欧米主要国は、今回のコソヴォ政府の対応についても。これを非難する姿勢を示している。

在コソヴォ米国大使館は5日、次の通り声明を発表した(強調表示は当サイトによるもの、以下同じ)。

米国政府は、コソヴォ政府がコソヴォ北部のセルビア系郵便局の支店に対して行った、一方的で協調性のない行動に深く失望している

コソヴォの協調性のない行動は、コソボ市民とKFOR兵士をより大きな危険にさらし、不必要に地域の緊張をエスカレートさせ、信頼できる国際的パートナーとしてのコソボの評判を損なうものである

我々は、コソヴォ政府に対し、これ以上の一方的な行動を中止し、コソヴォとセルビアの関係正常化に関連する問題を解決するため、EUが仲介する対話に建設的に関与するよう求める。

出典:在コソヴォ米国大使館ウェブサイト

またEU対外行動庁のスタノ(Petar Stano)報道官は5日、次の通り声明を発表した。

EUは、コソヴォ当局が本日実施したコソヴォ北部におけるセルビア郵政公社の9支店の閉鎖を、EUが仲介する対話の下で合意された内容に違反する、一方的かつ非協調的な措置であると考えている

2013年に合意された電気通信に関する取り決めと2015年に合意された行動計画の一環として、両当事者は郵便サービスについて「後の段階で」議論することに合意し、これにより、この問題は対話の枠組みの中でしか対処できないことを両当事者は認めている。このことは本日、ARKEPによって改めて認識された。

EUは、この問題を次回のベオグラード・プリシュティナ間対話会合の議題に含める用意がある。EUは、両当事者が解決策の基礎となりうる建設的なアイデアを発展させることを期待している。

コソボ・セルビア間の関係正常化プロセスに属するこの問題やその他の問題については、一方的で協調性のない行動では解決策を提示することはできない。事前に合意された新たな取り決め無しに、セルビア人コソヴォ住民の既存のサービスを閉鎖することは、セルビア人コミュニティの日常生活や生活環境に対して更なる悪影響を及ぼすことになる。

我々は、コソヴォ政府に対し、その決定を再考し、EUが促進する対話の枠組みにおいて、この問題の交渉による解決策を見出すよう求める

出典:EEASウェブサイト

2月の規則施行以降に相次ぐコソヴォ当局の一方的な強硬措置に対し、コソヴォ独立を主導してきた欧米諸国はこれを非難する姿勢を明確にしてきており、今回の郵便局閉鎖措置によって、欧米とコソヴォとの関係は更に複雑なものとなる可能性がある。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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