コソヴォ警察が北部のセルビア系金融機関を閉鎖:EUは一方的な行動を強く非難

5月20日、コソヴォ警察は、コソヴォ北部に所在するセルビア系金融機関6カ所を強制的に閉鎖した。

コソヴォ警察は、北部のセルビア系4自治体(北ミトロビツァ、ズベチャン、ズビン・ポトク、レポサビチ)に所在するセルビア郵便貯金銀行(Post Saving Bank/Poštanska štedionica)の支店6カ所を閉鎖した。コソヴォ警察は、この閉鎖措置について、ユーロ以外の通貨の使用を禁止するコソヴォ中銀規則に従ったものだと説明している。コソヴォ中銀は、ユーロ以外の通貨の使用を禁止する新規則を2月1日に施行しているが、セルビア・デイナールを日常的な決済通貨として使用するセルビア人住民については、当面の間は新規則への「移行期間」として、ディナール使用に対して罰則を適用しない方針を表明していた。

コソヴォのスベチュラ(Xhelal Sveçla)内相は自身のFacebookアカウントへの投稿において、「この作戦の目的は北部における法秩序の回復であり、コソヴォ警察は、検察の許可に基づき、税務当局との協力の下で、いわゆるセルビア郵便貯金銀行の6つの事務所を、コソヴォにおける違法金融機関として閉鎖した。法の支配と全ての市民へ区別なく奉仕することが我々の目的である」と述べている。

コソヴォ当局によるこの閉鎖措置に対し、コソヴォのセルビア人住民及びセルビア政府は強く反発している。セルビアのブチェヴィッチ(Miloš Vučević)首相は、「アルビン・クルティは、彼のパトロンがコソヴォの欧州評議会への加盟を認めてくれないことに絶望し、コソヴォ・メトヒヤのセルビア人の生存を直接脅かす新たな残虐行為を選んだ。一体誰が郵便貯金銀行によって悩まされているのか?なぜコソヴォのセルビア人は欧州で唯一、普通のビジネスが出来ない環境に置かれているのか?コソヴォのセルビア人には給与や年金を貰う権利があるのか?あるいは、コソヴォのセルビア人に対しては何をしても許されるというのか?これはクルティに対する質問ではなく、彼の悪行を許してきた国際社会に対する質問である」と述べる声明を発表した。

一方で、EU対外行動庁(EEAS)のスタノ(Petar Stano)報道官は21日に次のとおり声明を発表した(強調表示は当サイトによるもの)。

EUは、コソヴォ北部のセルビア郵便貯金銀行事務所に対して実施された月曜日の警察の作戦を懸念をもって注視した。

事前の通知や調整なしに行われたこれらの事務所の閉鎖と押収は、郵便貯金銀行の施設問題も扱った直近のベオグラード・プリシュティナ間対話会合からわずか数日後に実施されたものであり、緊張を高める行為である。これは関係正常化の精神に反し、対話を通じた関係正常化の達成におけるコソヴォの誠意を損なうものである

またしても、一方の当事者による調整の無い行動が、関係正常化への道筋に関する合意の履行を危険にさらしている。コソヴォ警察のこの作戦は、コソヴォ中央銀行の現金取引規制によって悪影響を受けた人々のための暫定的解決策に関する現在進行中の交渉も危うくしている

持続可能な代替案が依然として欠如している状況下で、これはコソヴォのセルビア人や、セルビアからの資金移転の対象となる他のコミュニティの日常生活や生活条件に悪影響を及ぼすことになる。

月曜日の作戦は、コソヴォ当局が友好国や同盟国との協力よりも一方的で非調整的な行動を優先していることを再び証明している

セルビアが支援するすべての組織やサービスの地位は、セルビア人多数派自治体連合/共同体の設立と関連して、EUが仲介する対話で解決されることが想定されている。

EUは、コソヴォとセルビアに対し、交渉の場に戻り、対象となる受給者がセルビアからの資金移転を受けられるようにするためにEUが提示した妥協案に合意するよう求める。

出典:EEASウェブサイト

ディナール使用を禁止するコソヴォ中銀の新規則施行以降、セルビア人コソヴォ住民に対する資金供給の問題について解決策を見出すために、EUが仲介するセルビア・コソヴォ間の対話が行われてきており、EUが合意案を提示していたが、最終的に両当事者が細部について合意できず、EEASは、「EUは、当事者が今後妥協的な合意を見出す用意はないと判断した。合意された打開策が存在しないことは、コソボのセルビア人をはじめとするコソボ全土のコミュニティの日常生活に否定的な結果をもたらし、継続的な懸念の原因となっている。EUは対話の仲介者として、相互に受け入れ可能な解決策を見出す用意があることを両当事者が表明し次第、この問題に関する別の会合を開催する用意がある」とする声明を5月15日に発表していたが、今回のコソヴォ警察による閉鎖措置は、この直後に実施された。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA