西バルカン

西バルカン地域全体に関連するニュース

セルビアと北マケドニア、ガス連系線の2028年初頭稼働で合意―エネルギー供給源の多角化を推進

12月12日、セルビアのジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ(Dubravka Đedović Handanović)鉱業・エネルギー大臣は、ベオグラードにて北マケドニアのボジノヴスカ(Sanja Božinovska)エネルギー・鉱業・鉱物資源大臣と会談し、両国間を結ぶ天然ガス連系線の建設プロジェクトについて協議を行った。この会談において両大臣は、2027年末までに建設を完了し、2028年初頭からの稼働開始を目指すことで合意した。

セルビア政府プレスリリース及び北マケドニア政府プレスリリースによれば、本プロジェクトは、セルビア南部と北マケドニア北部のガス供給網を物理的に接続するものであり、両国のエネルギー安全保障において戦略的な重要性を持つ。ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣が明らかにしたところによれば、セルビア側はこのガス連系線の建設におよそ1億5300万ユーロ(約1億7900万ドル)を投資することを計画している。セルビア国内のパイプライン区間は全長144キロメートルに及び、年間15億立方メートル(1.5bcm)の輸送能力を持つ設計となる。セルビア側の建設許可は2026年半ばに見込まれており、許可取得後直ちに着工する予定となっている。

一方、北マケドニア側の区間について、北マケドニア政府は全長約23キロメートルとなる見通しを示している。同国のボジノヴスカ大臣によると、北マケドニア北東部のクレチョヴツェ(Klechovce)付近で既存のガスシステムと接続し、セルビア南部のヴラニェ(Vranje)付近でセルビア側の送ガス網と連結される計画となっている。また、本連系線は将来的な水素輸送にも技術的に対応可能な仕様となることが確認されており、欧州の長期的な脱炭素化目標やグリーン政策に沿ったインフラ整備が進められることになる。

このガス連系線の建設により、セルビアはギリシャを経由して「南部ガス回廊」へのアクセスが可能となるほか、ギリシャのLNG(液化天然ガス)ターミナルから北マケドニアを通じてガスの供給を受けるルートが確立される。これは、従来ロシア産ガスへの依存度が高かったセルビアにとって、ブルガリアとの連系線に続く重要な供給源多角化の一手となる。ボジノヴスカ大臣もまた、この新たなエネルギーリンクによって両国が代替供給源へのアクセスを得ると同時に、バルカン半島全体の欧州との連結性が強化されると評価している。

なお、今回の閣僚会談ではガス分野だけでなく石油製品の供給についても議論がなされた。特にセルビア南部における需要の一部を北マケドニアからの供給で賄う可能性や、道路・鉄道輸送における物流支援についても話し合われたことは、両国のエネルギー協力が包括的な深化を遂げつつあることを示唆している。

世界銀行や商業銀行も本プロジェクトへの融資に関心を示しているとされており、西バルカン地域におけるエネルギー市場の統合と安定化に向けた動きは、今後さらに加速していくものと見られる。

(アイキャッチ画像出典:Government of the Republic of Serbia)

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。