
セルビア北部ノヴィ・サドで抗議デモと警察が衝突-多数の負傷者・逮捕者が発生
9月5日、セルビア北部の都市ノヴィ・サド(Novi Sad)において、警察の暴力に抗議するデモが行われ、参加者と機動隊が激しく衝突した。
ダチッチ(Ivica Dačić)内務大臣が6日にセルビア公共放送(Radio Television of Serbia, RTS)に語ったところによると、この衝突で42人が逮捕され、13人の警察官が負傷した。市民や学生側の負傷者数に関する公式な情報は発表されていない。
衝突は、警察がノヴィ・サド大学哲学部前からデモ参加者を強制的に排除しようとした際に始まった。現地メディアの報道やソーシャルメディアで拡散された映像には、機動隊が抵抗していない人々を殴打したり、催涙ガスや催涙スプレーを広範囲に使用したりする様子が映されている。
現場で取材していたジャーナリストも警察による暴力の対象となったと報じられている。地元のラジオ021のジャーナリストは、地面に倒れていたところを警察官に攻撃され蹴られたと証言している。また、週刊誌『ヴレーメ』(Vreme)の女性ジャーナリストは、他の数十人の市民と共に警察に拘束され、地面に伏せるよう強制されたと述べた。両者によれば、彼らは記者であることを示すベストなどを着用し、身分を明らかにしていたという。
『ヴレーメ』は後に声明を発表し、「記者が『PRESS』と明記されたベストを着用し、記者証を提示して繰り返し任務中であると伝えたにもかかわらず、警察は彼女を拘束し、編集部への連絡を禁じ、両手を後ろに組んで地面に伏せさせた」と述べ、当局の責任を追及する姿勢を示した。
一部の学生や市民は、学部長が警察の立ち入りを拒否した理学部など、近隣の学部の建物内に避難し難を逃れた。
この事態について、政府側は警察がデモ隊から攻撃されたと主張する一方、デモ参加者側は警察が平和的なデモを暴力的に攻撃したと主張している。内務省が公開した映像資料からは、哲学部前で一部のデモ参加者が棒などを用いて警察と衝突する様子が確認できる。
なお、暴力行為が発生する以前、デモ参加者によるスピーチが終わった段階で内務省は声明を発表していた。その中で、「ノヴィ・サドでの無届けの集会の参加者が、哲学部およびスポーツ・体育学部の前に駐留する警察を攻撃する意図があるとの情報を得た」とし、「集まった全ての者に対し、法を尊重し、警察を攻撃しないよう警告する。さもなければ、警察は自らの生命と安全を守り、安定した公の秩序と平和を維持するため、法に定められた全ての措置を講じざるを得なくなる」と警告していた。
デモ当日の5日深夜、ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は内務省庁舎内でダチッチ内務大臣及びヴァシリエヴィッチ(Dragan Vasiljević)警察長官を伴い国民向けの演説を行った。
ヴチッチ大統領は、この日の反政府デモの参加者はセルビア全土で9,380人、うちノヴィ・サドは7,020人であったと発表した。
演説の中でヴチッチ大統領は、デモ参加者を「セルビアを憎む最低のクズ」「ただの臆病者」などと激しい言葉で非難し、一部の欧州議会議員が「セルビアの破壊を支援するために」ノヴィ・サドにいたと主張した。その上で、警察は「厳格にプロフェッショナルな方法で」職務を遂行したと称賛し、今後「道路封鎖を行うテロリスト」と同様に数十人を逮捕すると予告。さらに検察に対し、特定のメディアによる扇動をこれ以上見過ごさないよう強く求めた。また、与党セルビア進歩党(SNS)が日曜日(7日)に14万人の参加を見込む支持者集会を全国で開催することも明らかにし、支持者には暴力で応じないよう呼びかけた。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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