アルバニアが新たに2つのチャプターについてEU加盟交渉を開始

12月17日、EU加盟国とアルバニアは、アルバニアのEU加盟交渉に関する第3回政府間会合を開催し、新たにクラスター6(対外関係)の交渉を開始することについて合意した。

欧州理事会プレスリリースによれば、これにより、アルバニアはチャプター30(対外関係)及び31(外交・安全保障・防衛政策)についてのEU加盟交渉を開始することになった。

会合後の共同記者会見において、アルバニアのラマ(Edi Rama)首相は、EU議長国としてのハンガリーのイニシアティブへの謝意を表明するとともに、「アルバニアは、2027年までに全てのチャプターについての加盟交渉を完了し、2030年までにEU加盟を実現することを目指している。アルバニアは、欧州の価値である民主主義、人権、法の支配とともに、欧州の共通安全保障政策を共有しており、アルバニアを『西バルカンにおける欧州』にしていくことを決意している」と述べた。

EU議長国ハンガリーのシーヤルトー(Péter Szijjártó)外務・貿易大臣は、「議長国として、西バルカンのEU加盟プロセスの加速に成功したことに満足している。アルバニアは2ヶ月間で2度の政府間会合を開催し、2つのクラスターの交渉を開始するという前例のない進展を見せた。これは過去15年間よりも多くの進展がこの2ヶ月間で達成されたことを意味している。アルバニアはNATO加盟国として既に重要な役割を果たしており、これはクラスター6の交渉開始にとって重要な意義があった」と述べた。

コス(Marta Kos)拡大担当欧州委員は、「本日の決定はアルバニアのEU加盟交渉における新たな節目となった。対外関係に関するクラスター6の交渉開始は、現在の不安定な国際情勢の下で地政学的に重要な意味を持っている。欧州委員会は、EU共通外交・安全保障政策に対するアルバニアの完全な整合性を高く評価している」と述べると同時に、「アルバニアが今後のEU加盟交渉を加速させるためには、市民社会を含む包括的な交渉プロセスを通じた、EU加盟に対する国民のコンセンサス構築が重要である」と指摘した。

アルバニアは、今年10月にEU加盟交渉における最重要政策分野を含むクラスター1の交渉を開始しており、これに続くクラスター6の交渉開始は、アルバニアのEU加盟交渉を大きく前進させるものとなった。

参考記事

駐日EU代表部の説明によれば、EUへの新規加盟に際して、新規加盟国側はEUが設定している3つの基準(政治的基準、経済的基準、法的基準)を満たす必要があるが、西バルカン諸国のEU加盟交渉においては、「チャプター」と呼ばれる35の個別政策分野ごとに交渉が行われており、これまでにモンテネグロとセルビアがチャプター別交渉を開始している。しかし、欧州委員会は2020年にこの交渉方式を改訂しており、「改訂拡大方式(revised enlargement methodology)」と呼ばれる現在の交渉方式においては、複数のチャプターをひとまとめにした「クラスター」毎に交渉の開始と妥結を図ることになっている。アルバニアは、改訂拡大方式を全面的に適用する最初のケースとなった。

欧州委員会による改訂拡大方式に関するQ&A

これまで、アルバニアのEU加盟交渉の進展は北マケドニアの加盟交渉と同じタイミングで進展してきており、両国は事実上同じグループとしてEUから扱われてきていた、しかし、歴史認識や国内少数民族の扱いを巡り、EU加盟国であるブルガリアが北マケドニアの加盟交渉進展を実質的にブロックする状況が続いており、アルバニアの加盟交渉もそれに引きずられる形で停滞していた。

今年7月にEU議長国となったハンガリーは、アルバニアと北マケドニアの加盟交渉を分離してアルバニア単独で加盟プロセスを進める方針を表明し、他のEU加盟国もこれに賛同したことでクラスター交渉が開始され、アルバニアの加盟交渉は大きな進展を見せている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。