
セルビア政府、NISの操業停止を受け石油備蓄の市場放出に向けた行動計画を策定
12月4日、セルビア政府は、国内唯一の製油所を運営するセルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije: NIS)が原油不足により操業停止を開始したことを受け、義務的石油備蓄を市場に放出するための行動計画の最終調整に入ったことを明らかにした。セルビアのジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ(Dubravka Đedović-Handanović)鉱業・エネルギー大臣は、同日、ハンガリー系のMOL(MOL Srbija)、オーストリア系のOMV(OMV Srbija)、ギリシャ系のEKO(EKO Srbija)、セルビア資本のクネズ・ペトロール(Knez Petrol)といった主要石油会社代表らと会合を持ち、国内市場への安定供給確保に向けた協議を行った。
セルビア政府プレスリリースによれば、ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣は、過去2ヶ月近くにわたりセルビアに原油が一滴も到着していないという厳しい現状を認めつつも、現時点では市民生活や経済活動への実質的な影響は生じていないと強調した。NISはパンチェヴォ(Pančevo)にある年間処理能力480万トンの製油所の稼働を段階的に停止し始めたが、これは今年1月に米国財務省が発表した対露制裁に関連し、10月に発効した措置によってクロアチア経由の唯一の原油輸入ルートが遮断されたことに起因している。NISの株式の44.85%はロシアのガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)が保有しており、米国側はロシア資本の完全撤退を求めている状況にある。
燃料供給不安が高まる中、ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は12月2日の記者会見にて、現時点での備蓄量は十分であるとの見解を示している。同大統領によれば、ディーゼル燃料に関しては商品備蓄5万3900トン、義務的備蓄15万590トンを保有しており、これは1月末までの市場需要を満たす量であるとされる。また、ガソリンについても義務的備蓄1万4533トン、商品備蓄4000トンが確保されている。セルビア国内の燃料消費の82%をディーゼルが占めており、NISの給油所(327カ所)は国内石油製品取引の48%を担う重要なインフラであるため、セルビア政府は慎重な対応を迫られている。
NISは12月3日、給油所での販売は通常通り継続されており、現金や国内決済カード「ディナ(Dina)」、および銀行アプリによる支払いが中断なく可能であるとするプレスリリースを発表した。また、ガスプロム・ネフチもNISが必要な業務調整を行い、独自の生産活動によって一定の原料備蓄を行っているとの声明を出している。
一方で、ヴチッチ大統領は、セルビア中銀や商業銀行が二次制裁のリスクに晒される可能性があるものの、今週いっぱいのNISの決済取引を確保する方針を示唆した。
今回策定が進められている行動計画は、エネルギー供給の安全性が脅かされた場合の危機管理計画に基づくものであり、セルビア政府の決定によってこの計画が正式に発動された場合、備蓄燃料によって市場の不足分が補填される見通しとなっている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)





































































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