
コソヴォ与党が新政権組閣に失敗-新たな議会選挙の可能性が高まる
10月26日、コソヴォ議会(Assembly of Kosovo)の臨時会合が開かれ、首相候補であったクルティ(Albin Kurti)暫定首相率いる新内閣案の承認に関する投票が行われたが、可決に必要な過半数の票を得られず、組閣は失敗に終わった。コソヴォでは2月の総選挙以来、新政権が発足せずに政治的混乱が続いており、新たに前倒し総選挙が実施される可能性が濃厚となっている。
コソヴォ議会プレスリリースによれば、議会(定数120)による投票の結果は、賛成56票、反対52票、棄権4票となり、政府樹立に必要な61票に5票届かなかった。これは、コソヴォにおいて首相候補による最初の組閣の試みが議会で否決された初めてのケースとなる。
クルティ氏が党首を務める与党「自己決定運動」(LVV, Levizja Vetëvendosje)は、今年2月9日の総選挙で第1党となったものの、獲得議席は47議席(または48議席)にとどまり、連立パートナーである少数民族政党の議席を加えても過半数を確保できていなかった。選挙後、議会議長の選出をめぐる対立から政治的膠着状態が4月以降続いていたが、8月26日にようやく議会議長が選出され、10月11日にオスマニ(Vjosa Osmani)大統領がクルティ氏に組閣を命じていた。
コソヴォ憲法で定められた15日間の組閣期限が迫る中、クルティ氏は26日の議会演説で、司法改革や防衛投資の強化を盛り込んだ政権プログラムを提示したが、他の主要なアルバニア系政党が連立交渉に応じなかったと説明した。採決では、野党のコソヴォ民主党(Partia Demokratike e Kosovës, PDK)、コソヴォ民主連盟(Lidhja Demokratike e Kosovës, LDK)、コソヴォ未来同盟(Aleanca për Ardhmërinë e Kosovës, AAK)がそろって反対票を投じた。また、コソヴォ最大のセルビア系政党であるセルビア人リスト(Srpska Lista, SL)のシミッチ(Igor Simić)議員も、「(クルティ前政権は)セルビア系住民だけでなく、アルバニア系住民の利益になる決定も下さなかった」と厳しく批判し、反対を表明した。
PDKのクラスニチ(Memli Krasniqi)党首は投票後、「クルティ氏が国を人質にしていることが証明された。これはコソヴォに多大な犠牲をもたらした政治的欺瞞の終わりだ」と述べ、オスマニ大統領に対し即時に新たな選挙を実施するよう求めると表明した。LDKのアブディジク(Lumir Abdixhiku)党首も、クルティ氏の動きを「ポピュリストのショー」だと批判した。AAKのハラディナイ(Ramush Haradinaj)党首も、唯一の解決策は選挙であるとの見解をかねてより示していた。
クルティ氏は議会演説で、新政権が樹立できなければ「コソヴォは機能する機関も来年度予算もないまま新たな選挙に向かうリスクがある」と警告し、EUが主導する「西バルカン成長計画」からの資金を失う可能性にも言及していた。
組閣失敗後の26日夜、クルティ氏は「当面は、新たな議会選挙に向けて現職(暫定)政府として継続する」との声明を発表。翌27日の記者会見では、LDKがPDKとの連立を(LVVとの連立参加にあたっての)条件としたが、LVVにとってPDKとの連立は受け入れられないと述べ、新たな選挙が不可避であるとの認識を示した。
コソヴォ憲法の規定によれば、オスマニ大統領は今後10日以内に、別の人物(通常は第2党のPDKから)に組閣を命じることができる。しかし、PDKを含む野党側は新たな政権樹立の試みには消極的で、早期の総選挙を望む姿勢を明確にしている。仮に次の首相候補による組閣も失敗した場合、大統領は議会を解散し、40日以内に総選挙が実施される。クルティ氏は暫定首相(caretaker government)として、新選挙まで職務を継続する。
なお、今回の議会手続きは、SLがラシッチ(Nenad Rašić)氏の議会副議長(セルビア人枠)選出に異議を唱えた申し立てについて、憲法裁判所がまだ判断を下していない中で行われており、議会の正当性に異議が残る可能性も指摘されている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock AI generated)

































































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