
セルビア大統領とアルバニア首相、EU単一市場への段階的統合を共同提案:拒否権放棄で加盟停滞の打破狙う
2月28日、セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領とアルバニアのラマ(Edi Rama)首相は、ドイツの有力紙フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(Frankfurter Allgemeine Zeitung:FAZ)に共同寄稿し、、準備の整った候補国を欧州単一市場およびシェンゲン圏へ早期に統合させる「段階的参入」を提唱した。両首脳は、このプロセスにおいて候補国側がEU内での拒否権(Veto)や欧州委員の送出権を行使しない意向を表明しており、拡大に伴う意思決定の停滞を懸念する既存加盟国の不安を解消しつつ、停滞する統合プロセスの加速を強く求めている。
ヴチッチ大統領およびラマ首相はFAZ紙への寄稿文の中で、2013年のクロアチア加盟以来、新規加盟が途絶えている現状を「悲劇的で意欲を削ぐ現実」と指摘したうえで、現在の欧州が「候補国による現実的な加盟への道のりの模索」と「既存加盟国によるEUの行動能力および団結の維持」という、二つの正当な目標の間で揺れ動いているとの認識を示した。両首脳は、特に、パリやベルリンなどの主要都市で主張されている「EU内部の改革が完了するまで拡大を待つべきだ」という議論に対し、それが事実上の「門戸閉鎖」を意味し、地政学的に不安定な現代において極めて危険な遅延を招くと警告している。ヴチッチ大統領らは、西バルカン地域を「EUの強靭化に向けた投資の新たな最前線」と定義し、拡大を単なる慈善活動ではなく、市場の拡大や戦略的深度の確保、そして欧州全体の平和を強固にするための「相互利益をもたらす投資」であると強調した。
具体的には、この段階的統合のステップにおいては、EU理事会における拒否権の付与や欧州委員の派遣、欧州議会議員数の割り当て、さらには投票構造の変更を伴わないことを明言した。ヴチッチ大統領らは、こうした譲歩が、拡大に対して慎重な姿勢を崩さない加盟国の懸念を緩和し、各国政府が自国民に対して拡大プロセスの正当性を説明することを容易にするものと確信している。また、E西バルカンへのEU拡大をEU内部での改革が完了するまで遅らせることは、加盟プロセスの信頼性を損ない、西バルカン地域における改革の機運を弱めるリスクがあると警告した。
この提言の背景には、加盟候補国が直面する政治的・経済的コストの増大がある。両首脳は、過去10年間で西バルカン地域が遂げた変革はかつて想像もできなかったほど進展したとしつつも、改革の機運を維持するためには、市民が目に見える形で統合の恩恵を享受できる「信頼に足る道筋」が必要であると訴えた。
西バルカン地域におけるEU加盟への支持率は国によって大きく乖離している。アルバニアでは支持率が91%に達し、生活の質の向上や国境開放への期待が高い一方で、セルビアでは45%と地域で最も低い水準に留まっている。こうした背景から、両首脳は「人々は加盟プロセスに信頼性があり、妥当な期間内に加盟が可能であることを確認する必要がある」と訴えた。
加盟交渉の進捗状況についても対照的な状況にある。アルバニアは2024年11月までに全6の政策分野群(クラスター)の交渉を開始し、2027年までの全交渉完了に向けて順調な進展を見せている。対してセルビアは、2021年12月以降、新たな交渉分野の開放が停滞している。EU加盟国は、セルビアがロシアに対する外交政策をEUと一致させていないことや、法の支配、報道の自由、汚職対策、およびコソヴォとの関係正常化交渉の進展の遅れを理由に、新たなクラスター交渉開始の承認を保留している。今回の共同提案は、こうした膠着状態を打破し、西バルカン地域全体の欧州統合に向けた新たな道筋を提示するものとして注目される。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)



























































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