
EU・西バルカン首脳会議が開催されるもセルビアは欠席-深まる加盟プロセスの明暗と各国の訴え
12月17日、ベルギーのブリュッセル(Brussels)においてEU・西バルカン首脳会議(EU-Western Balkans Summit)が開催された。EU側からコスタ(António Costa)欧州理事会常任議長(EU大統領)およびカラス(Kaja Kallas)外務・安全保障政策上級代表が出席した本会議は、地政学的課題が山積する中でEUと西バルカン諸国の戦略的パートナーシップを再確認する最も重要な機会となった。採択された「ブリュッセル宣言(Brussels Declaration)」では、西バルカン諸国のEU加盟の見通しに対する全面的かつ明確なコミットメントが改めて示され、西バルカンへのEU拡大プロセスが平和と安定のための「地政戦略学的な投資(geostrategic investment)」であることが強調された 。
今回の首脳会議で最も注目を集めたのは、地域最大の経済規模を誇るセルビアの不在であった。ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は前日の16日、「我々は、我々が如何に大きな成果を成し遂げてきたかを示さねばならない」と述べ、セルビアのEU加盟交渉の停滞を理由に過去13、14年で初めて代表団の派遣を見送る決定を下したことを明らかにした。一方でヴチッチ大統領は、EU加盟はセルビアの戦略目標であり続けるとも述べた。
セルビアは競争力と包括的成長に関する政策群である「クラスター3」の交渉開始を求めていたが、EU理事会は法の支配やコソヴォとの関係正常化における進展不足を理由に、これまで交渉開始を承認してこなかった。欧州委員会はすでに2021年10月の時点で、セルビアがクラスター3開始のための技術的要件を満たしているとの結論を出していたが、最終的な決定権を持つ加盟国間での合意には至っていない。
セルビアのスタロヴィッチ(Nemanja Starovic)欧州統合担当大臣は、この決定について「過去4年間の改革成果を認めない近視眼的な姿勢であり、セルビア国内での反欧州的な言説を助長する」と強く批判した。
北マケドニアのミツコスキ(Христијан Мицкоски)首相も、加盟プロセスの不透明さに苦言を呈した。ミツコスキー首相は、自国の加盟への道のりが25年前に始まっていることを強調し、「(隣国との二国間問題という)いわば『人工的な理由』によって、未だに欧州の家族の一員になれずにいる」と指摘した。ミツコスキ首相は、改革は単なる手続きのためではなく市民のために断行しているとした上で、今後の評価は二国間問題ではなく、各国の具体的な「実績(merit)」に基づいて行われるべきであると訴えた。
また、コソヴォのオスマニ(Vjosa Osmani)大統領は、コソヴォに対するEUの実質的な制裁措置の完全撤廃を求めるとともに、正式な候補国ステータスの付与に向けて加盟国からの支持を要請した。
一方で、加盟プロセスにおける前向きな進展も報告されており、コスタ常任議長は拡大が過去15年間で最も速いペースで動いていることを強調した。モンテネグロのミラトヴィッチ(Jakov Milatović)大統領は、前日にモンテネグロが5つの政策分野(チャプター)に関する加盟交渉を暫定的に完了したことを受け、自国が「EU加盟プロセスのフロントランナー」であることを改めて示した。
アルバニアについても、2024年11月までに全ての交渉クラスターを開放した実績が高く評価されている。さらに、ボスニア・ヘルツェゴビナが「西バルカン成長計画(Growth Plan for the Western Balkans)」に基づく最大60億ユーロの支援を受けるための「改革アジェンダ」を採択したことも、地域全体の社会経済的収斂に向けた大きな一歩として歓迎された。
コスタ常任議長は、拡大プロセスが過去15年間で最も速いペースで動いているとし、「過去に囚われるか、共同の未来へ進むかの政治的選択」を各国に促した。また、最大60億ユーロを投じる「西バルカン成長計画(Growth Plan for the Western Balkans)」を通じて、加盟前の段階的統合と経済的収斂を強力に支援する方針を改めて示した。次回の首脳会議は、2026年6月にモンテネグロで開催される予定となっている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)


































































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