セルビア第2の都市で駅舎屋根が崩落し14名が死亡:中国企業の関与を疑う声も挙がる
11月1日、セルビア第2の都市ノヴィ・サドにおいて、鉄道駅舎の屋根が崩落する事故が発生した。この事故で死者14名、重症者3名が発生している。
セルビア当局発表によれば、事故は現地時間1日正午頃に発生し、駅舎入り口屋外部分の屋根が長さ約35メートルに渡って崩落した。これにより、駅舎入り口付近にいた利用客らが下敷きとなった。通報を受け、ノヴィ・サド市外から応援を含む救助隊等総勢80名体制での救助活動が行われたが、結果的に死者14名、重症者3名が発生する惨事となった。死亡者には6歳の少女と1名の外国籍者(北マケドニア)が含まれている。
この事故を受け、ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、「これは国家とノヴィ・サド市にとっての大きな悲劇であり、犠牲者の遺族に対し国民を代表して哀悼の意を表する」とする声明を発表した。またヴチッチ大統領は、この悲劇的な事故の政治的及び刑事上の責任を追及し明らかにすると述べ、検察及びセルビア政府に対し、この事故に対し責任を負う者を特定し厳罰に処すよう要請したと明らかにした。
ダチッチ(Ivića Dačić)副首相兼内相は3日、この事故に関し、駅舎の建設工事関係者や鉄道会社関係者26名が警察の事情聴取を受けたと発表した。ダチッチ内相はまた、警察と検察が、ノヴィ・サド駅舎の建設・改修及び定期点検に関する関係書類を関連機関より押収しているほか、崩落した屋根の内部に使用されていた鉄筋を証拠物品として現場から押収していると述べた。
ノヴィ・サド駅は、中国が「一帯一路」政策の下で整備を進めるベオグラード・ブダペスト間高速鉄道の路線の一部を構成しており、鉄道路線の整備とともに、中国企業による駅舎の改修も行われている。このため、事故発生直後より、中国企業の関与を指摘する声がセルビア国内の一部から挙がっている。これに対し、駅舎の改修工事を請け負っていた中国交通建設(China Communications Construction Company: CCCC)と中鉄国際集団(China Railway International)は、セルビアメディアに対し、「崩落した屋根は1964年に建設された当時のものであり、最近実施された駅舎改修工事の対象外の箇所である」と述べ、崩落した屋根部分への関与を否定している。また、駅舎を管理するセルビア鉄道インフラ公社も、崩落した屋根は最近の改修工事の対象ではなかったとセルビアメディアに対し述べている。一方で、セルビア国内の専門家等からは、崩落部分が直接的な工事の対象箇所ではなかったとしても、直近に実施された工事の影響を間接的に受けていた可能性があるとの指摘もなされている。
セルビア国内報道によれば、ノヴィ・サド駅の改修工事は2021年に開始され、2022年に正式に駅舎の運用が再開された後も漸次改修工事が実施されており、今年7月に全ての工事が完了したばかりであったとされている。
中国企業との対セルビア投資に関する覚書締結のために上海を訪問中であったブチェヴィッチ(Miloš Vučević)首相は、訪問先でメディアの取材に応え、「現時点では誰も事故の背景と原因に関する完全な情報を有しておらず、誰もが不十分な情報を元に異なる見解を好き勝手に述べている。無論、全ての真実が明かされねばならず、その結果として、この事故に責任を負う者は裁かれねばならない。しかし自分は、反中国ヒステリーに与する気は無い」と述べた。
この事故を受け、セルビア政府は11月2日を服喪の日と定めた。また、首都ベオグラードでは、野党支持者等を中心に事故に対する抗議集会が開催され、事故に対する政府の責任を糾弾し、ベシッチ(Goran Vesić)建設・運輸・インフラ大臣を含む関係政府高官の辞任を求めた。抗議参加者等は、事故の背景には汚職や杜撰な工事が存在していたと主張した。
(アイキャッチ画像は2022年に撮影されたノヴィ・サド駅、出典:Shutterstock)
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