
セルビア大統領、物価高騰受け低所得者向け支援策を発表-9月1日から施行へ
7月29日、セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、生活費の上昇に苦しむ低・中所得者層を対象とした新たな支援策パッケージを準備しており、9月1日からの施行を目指すと発表した。この支援策は、加速するインフレから国民生活を守ることを目的としている。
ヴチッチ大統領が自身のインスタグラム(Instagram)に投稿したビデオメッセージで明らかにしたもので、このパッケージには以下の内容が含まれる。
- 物価対策: 主要な生活必需品の小売価格引き下げ。
- 金融支援: 市民が抱えるローン金利の引き下げ。
- 住居の保護: 民間の執行官が個人の唯一の住居を差し押さえることを防ぐための憲法改正。
- エネルギー対策: 冬季の暖房に不可欠な薪の価格設定、および電気料金の最高税率が適用される月間使用量の上限(現在1,600キロワット時超)を引き下げる計画への対応。
この支援策の背景には、深刻化する国内のインフレがある。セルビアの年間消費者物価上昇率は、5月の3.8%から6月には4.6%へと加速し、中央銀行が定めるインフレターゲットの範囲(1.5%~4.5%)の上限を今年1月以来初めて上回った。中央銀行は、インフレが今後数ヶ月間、目標範囲の上限付近で推移するとの見通しを示している。
また生活費も上昇しており、内外貿易省の最新データ(3月時点)によると、最低限の生活に必要な費用(minimum consumer basket)は55,528ディナールに達している。これは、6月時点の平均年金額である50,675ディナールを上回っており、特に年金生活者の苦しい状況がうかがえる。ヴチッチ大統領は、「インフレ率がどの程度か我々はよくわかっている。だからこそ、常にそれを大幅に上回る賃金と年金の引き上げを試みているが、それが常に容易ではないこともわかっている」と述べ、政府の危機感をにじませた。
今回のパッケージは、政府が既に進めている所得向上策を補完するものとなる。政府は、10月1日から月額最低純賃金を9.4%引き上げて500ユーロとし、来年1月にはさらに10.1%引き上げることを決定している。また、ヴチッチ大統領は年末までに年金の「大幅な引き上げ」も行うと明言している。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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