ノヴィ・サドで駅舎崩落事故に対する大規模抗議デモ開催:一部で暴力的衝突が発生

11月5日、セルビア第2の都市ノヴィ・サドで、14名の死者を出した駅舎屋根崩落事故の責任を問う大規模な抗議デモが発生し、一部が暴力的な衝突に発展した。

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主催者発表や国内報道によれば抗議デモには数千人規模の市民が参加した。参加者はヴチェヴィッチ(Miloš Vučević)首相、ジュリッチ(Milan Djurić)ノヴィ・サド市長の辞任を要求し、市庁舎前ではペンキや投石、火炎瓶が投げ込まれる事態となった。これに対し警察は催涙ガスを使用して群衆の鎮圧を図った。当局は暴力行為に関与したとして9名を逮捕し、さらに12名の「暴徒」を特定したと発表した。逮捕容疑は公共の場での暴力行為、器物損壊、警察官への暴行などで、警察は監視カメラの映像を基に参加者の特定を進めていると述べた。

ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は現地を訪れ、「暴力は決して許されない」と述べ、事故の責任者には厳正な処罰を行うと約束する一方で、デモの暴力化を強く非難した。

これに対し野党側は、暴力行為は政府側が送り込んだ挑発者によるものだと反論している。抗議デモに参加した「正義・自由党」(SSJ)のテピッチ(Marinika Tepić)副党首は、「与党セルビア進歩党(SNS)がサッカーファンのグループに野球バットを配布して暴力を扇動したとの告発も行われている。この暴力は、平和的なデモを意図的に混乱させようとする政府の策略である」と述べ、衝突の責任は与党側にあると非難した。

与党側は、事態収束に向けてヴェシッチ建設相が道義的責任を取って辞任を表明している。

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1日に発生した駅舎屋根崩落事故に関し、検察は48名からの事情聴取を実施したと発表しており、事故原因の究明と責任追及が続けられている。

一連の抗議行動は、14名の死者を出した駅舎事故への市民の怒りが、従来からの政府への不信感と結びついて表出したものとされている。特に、2021年から実施された駅舎改修工事の詳細が機密指定されていることによる透明性の欠如、工事の施工や施工管理を請け負っていた企業がセルビアやハンガリーの与党政治家と親密な関係にあったとの報道等が、政府に対する市民の不信を助長している要因として指摘されている。

(アイキャッチ画像出典:Kreni-Promeni via X)

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