
米国、NISのロシア権益排除をセルビアに要求-ヴチッチ大統領はセルビア銀行に対する制裁猶予を米国に要請
10月28日、ウズベキスタンを公式訪問中のセルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、タシケント(Tashkent)において、米国がセルビア最大のエネルギー企業である「セルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije, NIS)」に課している制裁に関して言及した。
これは、セルビア公共放送RTSが同日、匿名の外交筋の情報として、米国は制裁解除の条件として、NISにおけるロシアの権益が売却されるか国有化されることを望んでいると報じたものを受けたものである。報道によれば、米国は、ウクライナでの戦争資金となる利益をロシアがセルビアにおいて上げ続ける状況を終わらせる必要があると考えており、それ以外の選択肢は米国にとって受け入れ可能とは見なされていない。
ヴチッチ大統領は、RTSの報道についてコメントし、米国が、セルビアによるNIS資産の国有化を条件に制裁の遅延を提案したことを認めた。ヴチッチ大統領は以前、国有化は「最後の選択肢」であるとしてこれを拒否したと述べていた。一方で、ロシア側はセルビアによるNIS国有化を牽制する意図で、セルビアに対する新たな長期の天然ガス供給契約を保留しているとも伝えられている。
RTSの報道によれば、ヴチッチ大統領は取材に対し、「私は共産主義者でもファシストでもないが、セルビアは生きなければならず、呼吸をしなければならない。私には共和国大統領として、セルビアと国民を守り、十分な石油と石油派生製品を確保する義務がある」と述べた。
米国財務省は今年1月、ウクライナ戦争を巡るロシアのエネルギー部門に対する広範な制限措置の一環として、NISのロシア資本を理由に同社への制裁を発表した。数度の延期を経て、制裁は10月8日に発効した。
ヴチッチ大統領はまた、10月28日夜、米国側に対し、NISとの取引を理由にセルビアの金融機関を制裁対象としないよう強く要請した。与党セルビア進歩党(Srpska Napredna Stranka, SNS)が投稿した動画の中で、ヴチッチ大統領は、「我々の問題を解決するために、少なくとも12月半ばまで時間を与えてほしい。そして(措置を発動する場合には)少なくとも7日前に通知してほしい。そうすれば我々は全ての人に警告し、銀行、特に唯一の国営銀行であるポシュタンスカ・シュテディオニツァ(Poštanska Štedionica)銀行、そして我々のシステムで運営されている他の銀行の安全な生活と未来を確保できる」と訴えた。
制裁発効後、ヴチッチ大統領はNISへの制裁がセルビアの銀行部門、特にNISの融資返済において深刻な問題を引き起こすと警告していた。NISの6月末時点の銀行への負債総額は5億1,600万ユーロ(約6億100万ドル)であった。
制裁発効により、NISのガソリンスタンドではマスターカード(Mastercard)とアメリカン・エキスプレス(American Express)の支払いが停止された。現金、セルビアのナショナル・ペイメント・カードであるディナ(Dina)、モバイルバンキングアプリ、IPS即時決済システムによる支払いは引き続き可能である。しかし、ヴチッチ大統領によれば、米国財務省外国資産管理室(OFAC)は、NISのガソリンスタンドでディナ・カードが引き続き使用されていることについて、セルビア国立銀行(NBS)に警告している。
NISは、セルビア唯一の製油所であるパンチェヴォ(Pančevo)製油所を運営している。ヴチッチ大統領は以前、同製油所は11月1日までに新たな原油供給がなければ稼働を継続できないとしていたが、28日には、稼働を11月17日、18日、あるいは20日まで数日間延長できるかもしれないとしつつも、「それで我々の問題が解決するわけではない」と付け加えた。
NISはパンチェヴォ製油所の運営のほか、セルビア国内で328ヶ所のガソリンスタンドからなる最大の燃料小売ネットワークを運営している。また、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ブルガリア、ルーマニアでも事業を展開し、約13,500人の従業員を擁している。
NISの株式は、ロシアのガスプロム・ネフチ(Gazprom Neft)が44.85%、セルビア政府が29.87%、ガスプロムが実質的に管理するサンクトペテルブルク拠点のインテリジェンス(Intelligence)社が11.3%を保有し、残りは少数株主が所有している。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)



































































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