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米国が強制労働問題を理由にリンロン社セルビア工場製タイヤを輸入禁止に

12月18日、米国税関・国境取締局(CBP:U.S. Customs and Border Protection)は、セルビア北部のズレニャニン(Zrenjanin)に拠点を置く中国系企業のリンロン・インターナショナル・ヨーロッパ(Linglong International Europe D.O.O. Zrenjanin)が製造した自動車用タイヤについて、強制労働によって製造された疑いがあるとして、輸入差し止め命令(WRO:Withhold Release Order)を発令した。この命令は即日発効し、米国のすべての入国港において当該製品の出荷が留置されることとなった。

CBPプレスリリースによれば、スコット(Rodney S. Scott)CBP長官は声明の中で、米国はサプライチェーンにおける強制労働を容認しないという明確なメッセージを発した。CBPは調査の結果、ズレニャニンのリンロン社工場では国際労働機関(ILO:International Labour Organization)が定める強制労働の9つの指標、すなわち身分証明書の保持、脅迫および脅し、隔離、過度な残業、賃金の未払い、債務労働、虐待的な生活・労働環境、欺瞞、脆弱性の悪用が確認されたとしている。CBPは、今回の決定が、労働者の声明、写真、雇用契約書、テキストメッセージのスクリーンショット、非政府組織(NGO)の報告書、メディア報道、および学術研究を含む広範な証拠の分析に基づいていると表明した。

ズレニャニンのリンロン工場を巡っては、建設が開始された2019年以降、劣悪な労働環境や人権侵害の疑いが繰り返し指摘されてきた。バルカン調査報道ネットワーク(BIRN:Balkan Investigative Reporting Network)やセルビアのNGOであるアストラ(ASTRA)などは、ヴェトナム人やインド人労働者に対する搾取の実態を詳細に報じていた。2021年には欧州議会が人権侵害の調査を求める決議を採択したほか、国連の人権特別報告者も懸念を表明していた。これに対し、リンロン社は過去の不適切な事例は既に契約を解除した下請け業者によるものであると主張し、現在はセルビアの法律および国際的な基準を遵守しているとして不正行為を一貫して否定している。

今回の制裁措置は、セルビア経済にとって大きな打撃となる可能性がある。ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領が投資額約10億ユーロに上る「国内最大のグリーンフィールド投資」と位置づけた同工場は、2024年9月に本格的な連続生産を開始したばかりであった。セルビア商工会議所のデータによれば、タイヤは2024年におけるセルビアから米国への最大の輸出項目であり、その輸出額は約1億2,400万ユーロに達している。また、既にドイツのフォルクスワーゲン(Volkswagen)傘下のマン(MAN Truck & Bus)が昨年末に同社からの調達を停止するなど、欧米の主要な自動車メーカーによる供給網の見直しが加速している。

CBPの貿易局執行補佐官代理を務めるトーマス(Susan S. Thomas)は、強制労働による製品の流入を防ぐことは、米国の労働者や企業が公平な条件下で競争することを保証するものであると強調した。今後、留置された出荷の輸入者は、製品が強制労働によらずに製造されたことを証明するか、あるいは製品を廃棄または再輸出するかの選択を迫られることとなる。

(アイキャッチ画像はリンロン・ズレニャニン工場、出典:リンロン社ウェブサイト)

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