
セルビアで5G商用サービスが本格始動-国営テレコム・セルビアは2026年中の全国網羅へ向けたロードマップを提示
12月4日、セルビアの国営通信事業者であるテレコム・セルビア(Telekom Srbija)のルチッチ(Vladimir Lučić)総裁は、セルビア公共放送RTSのインタビューに応じ、同社が提供する第5世代移動通信システム(5G)のネットワークについて、2026年中にセルビア国内の全都市をカバーする見通しであることを明らかにした。
RTSウェブサイトに掲載されたルチッチ総裁のインタビューによれば、、セルビアにおける5G導入に関しては、電子通信・郵便業務規制庁(Regulatorna agencija za elektronske komunikacije i poštanske usluge:RATEL)による周波数オークションを経て、先日テレコム・セルビア、イェッテル(Yettel)、A1セルビア(A1 Srbija)の携帯電話事業者3社に対し、正式にライセンスが付与されたばかりである。これら3社はそれぞれ約1億ユーロをライセンス料として支払うことで合意しており、長らく待望されていた同国での5G商用サービスがようやく開始される運びとなった。
ルチッチ総裁によれば、テレコム・セルビアはすでに技術的な準備を完了しており、現時点で首都ベオグラードのほか、ノヴィ・サド(Novi Sad)、ニシュ(Niš)、クラグイェヴァツ(Kragujevac)といった主要都市において5Gネットワークが利用可能となっている。さらに、スボティツァ(Subotica)、クルシェヴァツ(Kruševac)、ヤゴディナ(Jagodina)などの都市へも順次展開が進められており、12月末までには稼働する5G基地局の数が1,050基に達する予定だとされている。
テレコム・スルビヤの試算では、既存契約者のうち約105万人がすでに5G対応のスマートフォンを所有しており、これらのユーザーはネットワークの切り替えとともに即座に高速かつ安定したインターネット接続の恩恵を受けることができる。ただし、一部の端末メーカー(サムスン等)の旧モデルについては、完全な5G機能を利用するためにメーカー側のソフトウェアアップデート等を待つ必要があるなどの課題も残されている。
ルチッチ総裁は、5Gの導入効果について、初期段階では通信速度の向上といったユーザー体験の改善が主となるものの、本質的な変革は産業用途での活用にあると強調している。特に、低遅延という5Gの特性を活かしたロボット工学の発展や人工知能(AI)との統合、さらにはスタートアップ企業による新たなソリューションの実証実験の場として、産業界にイノベーションをもたらすことが期待されていると、ルチッチ総裁は語った。
セルビアの携帯電話市場において、テレコム・セルビアは約41.6%のシェアを持つ最大手であり、次いでイェッテルが約33.1%、A1セルビアが約25.2%を占めている。最大手である同社が2026年に向けた野心的なカバレッジ拡大計画を明示したことは、西バルカン地域におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の加速を示唆する重要な動きと言える。
西バルカン地域においては、モンテネグロと北マケドニアが5G整備においては先行しており、セルビアとアルバニアがそれを追う形となっている。一方で、ボスニア・ヘルツェゴヴィナは地域内でも最も導入が遅れており、現時点では本格的な5G商用サービス展開の目処は立っていない。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)



































































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