
セルビア議会前で発砲事件が発生し1名負傷-ヴチッチ大統領は「テロ行為」と非難
10月22日午前10時過ぎ(セルビア現地時間)、セルビアの首都ベオグラード中心部にある国民議会議事堂(Serbian National Assembly / Dom Narodne skupštine)前で発砲事件が発生し、男性1名が負傷した。現場は、与党セルビア進歩党の支持者らが2025年3月から多数のテントを設置しているキャンプで、容疑者の男1名が逮捕された。キャンプのテント1張も放火された。
ベオグラード高等検察庁の発表によると、逮捕されたのはイニシャルV.A.(1955年生まれ)と特定された男で、「異なる政治的見解をめぐる口論」の末、無許可で所持していた銃器を取り出し数発発砲したとされる。弾丸のうち1発が被害者男性の太ももに命中し、別の1発が近くにあったガスボンベに当たり、爆発と火災を引き起こした。被害者はミラン・ボグダノヴィッチ(Milan Bogdanović)氏(1968年生まれ)と報じられており、病院に搬送され手術を受けた。容疑者は殺人未遂、武器・爆発物の不法所持・携帯・取引、および一般的危険行為の疑いで最大48時間勾留される。
ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、出席中だった別のイベントの冒頭でこの事件に言及し、「深刻なテロ行為」が発生したとして、対応のためイベント会場を早退した。その後の記者会見でヴチッチ大統領は、この襲撃を、16名が死亡したノヴィ・サド駅の鉄道事故に端を発する約1年にわたる反政府抗議デモと関連付けた。
また、「チャツィランド(Caciland)」と俗称されるこの与党支持者らのキャンプに対し、「多くの憎悪と攻撃的な言葉が向けられてきた」と述べ、事件は「いつ起きてもおかしくなかった」と主張した。会見では、容疑者のフルネームや勤務先といった個人情報が読み上げられたほか、警察が撮影した容疑者の映像も公開された。映像の中で男は、テントによる市中心部の「占拠」にいら立ちを感じていたなどと話したとされている。
ヴチッチ大統領は同日夜、議会前で行われた与党支持者らの集会に参加し、ボグダノヴィッチ氏への市民の支持を呼びかけるとともに、議会前のチャツィランドは「今後は、自由と抵抗の象徴の場所になるだろう」と述べた。
マツット(Đuro Macut)首相も「深刻な、政治的動機による事件」として深い懸念を表明した。ヴチッチ大統領は同日、病院で手術を終えたボグダノヴィッチ氏を見舞った。
なお、事件発生時、議会は会期中で採決が行われていた。また同日、欧州議会(European Parliament)はセルビアに関する決議を採択し、ノヴィ・サド駅災害の公開調査を求めるとともに、セルビア国内の政治的二極化や国家による抑圧を非難した。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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