
セルビアのパンチェヴォ製油所、11月25日まで稼働継続-相次ぐ米国制裁がセルビアのエネルギー部門に打撃
10月29日、セルビアのジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ(Dubravka Đedović Handanović)鉱業・エネルギー大臣は、国際通貨基金(International Monetary Fund, IMF)ミッションとの会談後、国内唯一の石油製油所であるパンチェヴォ(Pančevo)製油所が11月25日まで支障なく稼働を継続するとの見通しを明らかにした。ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣はまた、セルビアには市場の安定を維持するのに十分な石油および石油派生製品の備蓄があると強調した。
パンチェヴォ製油所は、ロシア資本が管理し米国の制裁対象となっている「セルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije, NIS)」によって所有・運営されている。ウクライナ情勢を巡る米国の対ロシア制裁が10月8日に発効したことにより、クロアチアのパイプライン運営会社ヤナフ(Janaf)は、NISとの原油供給契約の履行が不可能となった。NISは、輸入原油の全てをこのパイプライン経由で受け取っていた。制裁発効直後、セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、新たな原油供給なしでは製油所は11月1日までしか稼働できないと述べていたが、その後、11月17日から20日頃まで稼働を延長できる可能性に言及していた。
ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣は、状況をさらに複雑にしている要因として、セルビア国内で事業を展開するロシアの石油会社ルクオイル(Lukoil)に対する米国の新たな制裁(同社のセルビアにおける通常業務ライセンスは11月21日まで有効)と、ハンガリーの石油会社MOL(Hungarian Oil and Gas Public Limited Company)の製油所で発生した火災を挙げた。火災は、MOLからセルビアへの石油化学製品の供給に影響を与える可能性があるとされている。
こうした状況下で、セルビア政府は石油派生製品の輸入を増やしているが、輸送や物流面での制約に直面している。対策の一環として、NISは国内の小規模ガソリンスタンドへの供給量を増やし、市場への均等な供給を図る方針である。
NISに対する制裁は、天然ガスの供給交渉にも影響を及ぼしている。NISを間接的に支配するロシアのガスプロム(Gazprom)は、セルビア側が期待していた長期の新規供給契約の代わりに、既存の年間22億立方メートルの供給契約を12月31日まで延長する案を提示したと報じられている。しかし、ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣は、今冬の暖房シーズンにおける安定的な天然ガス供給は確保されていると述べた。セルビアは現在、国内のバナツキ・ドヴォル(Banatski Dvor)ガス貯蔵施設およびハンガリーでリースしている施設に合計約5億3,400万立方メートルのガスを確保している。ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣は、ガスプロムとの長期契約交渉とNIS問題の解決策模索を並行して進めていると語った。
セルビアは現在、ロシア産ガスをトルコ経由で運ぶバルカン・ストリーム(Balkan Stream)パイプラインを通じて主にガスを輸入しているほか、ブルガリアとの相互接続パイプラインを通じてアゼルバイジャン産ガスも年間約4億立方メートル輸入している。政府はガス供給ルートの多様化を目指し、バナツキ・ドヴォル貯蔵施設の拡張に加え、ルーマニアおよび北マケドニアとの新たな相互接続パイプラインの建設計画も進めている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)






































































 
 
 
 
 
 
 
 
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