【報道】セルビアがイスラエル軍事企業との間でUAVなどの調達契約を締結
イスラエルのメディアの報道によると、セルビアがイスラエルの軍事技術企業エルビット・システムズと3億3500万ドル規模の武器供給契約を締結していたことが明らかになった。
1月1日付イスラエル紙「ハアレツ(HAARETZ)」の報道によれば、この契約には、最新型の砲兵システムと無人航空機システムが含まれるとされている。
エルビット・システムズは2024年11月、「欧州のある国に対してPULSロケット発射装置とロケット、そしてヘルメス900無人航空機システムを供給する総額約3億3500万ドルの契約を獲得した」と発表していた。その翌日、セルビアのブチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は記者会見で、「世界最強のミサイル砲兵システム」と「最高水準の無人機システム」の調達契約を締結したと述べたが、供給元や製造国については明らかにしていなかった。
ヘルメス900は、エルビット・システムズ社が開発した中高度長時間滞空型の無人航空機であり、ペイロード容量は450キログラム、機体内部と翼下のハードポイントに各種装備を搭載できる。航続距離は1,000キロメートル以上、最大滞空時間は36時間、行動半径は1,000キロメートル以上に及び、衛星通信を介して遠距離での運用が可能である。搭載可能な装備として、電子光学/赤外線センサー、レーザー照射装置、合成開口レーダー、電子戦装備、通信諜報装置などがあるほか、イスラエル製の各種兵装システムを搭載可能で、地上目標への攻撃能力を有している。
開発国のイスラエルをはじめ、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、インド、アイスランド、フィリピン、スイスなどが既にヘルメス900を導入しており、イスラエル国防軍による2014年7月のガザ地区での作戦において初めて実戦投入された。2024年には、レバノンのヒズボラによって撃墜される事案も発生している。また、2020年のアルメニア・アゼルバイジャン紛争では、アルメニア軍がアゼルバイジャンのヘルメス900を撃墜したと主張している。
西バルカン地域では、トルコのエルドアン(Recep Tayyip Erdoğan)大統領が2024年10月にセルビアを訪問した際、軍事用UAVの共同製造を含む軍事部門での二国間協力の可能性を示唆している。また、コソヴォは2023年にトルコ軍事企業バイカル社製のUAVであるバイラクタルTB2を調達しているほか、2024年11月にはトルコ企業との協力の下で独自のUAV開発に向けた研究を進める方針を表明している。トルコは、アルバニアに対しても、自爆型UAVの提供を表明している。一方、コソヴォに対するトルコによるバイラクタルの提供を受け、セルビアは過去に計画していたバイラクタル導入を撤回している。
ウクライナ情勢の影響もあり、世界各地で軍事用UAVの重要性が高まっており、各国が導入を進めている。ハアレツによると、セルビアとイスラエルは過去1年間で急速に安全保障分野での協力関係を深めており、バルカン調査報道ネットワーク(BIRN)とハアレツの共同調査によれば、セルビアは2024年1月から9月の間に2,310万ユーロ相当の弾薬をイスラエルに輸出したとされている。
(アイキャッチ画像はHermes 900、出典:shutterstock)
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