セルビア・ブルガリア間のガスパイプライン連結部が開通:アゼルバイジャン産天然ガスの輸入が可能に

12月10日、セルビア・ブルガリア間ガスパイプライン接続部が正式に開通した。これにより、ブルガリアを経由したアゼルバイジャン産天然ガスのセルビアへの輸送が可能となった。

接続部の工事は今月初めに完了していた

セルビア南部ニシュ(Nis)近郊のトルパレ(Turpale)パイプライン制御施設で開催された開通式典には、セルビアのブチッチ(Aleksandar Vucić)大統領、ブルガリアのラデフ(Rumen Radev)大統領、アゼルバイジャンのアリエフ(Ilham Aliyev)大統領のほか、ギアウフレット(Emanuele Giaufret)駐セルビアEU代表部大使が出席した。

出典:セルビア大統領府ウェブサイト

ブチッチ大統領は、「このガスパイプライン開通は、セルビアのエネルギー安全保障の新しい時代の幕開けを意味する。これによってセルビアのエネルギー源は多様化され、欧州のエネルギー市場におけるセルビアの立場は強まった。この計画を実現するにあたり、セルビアの戦略的パートナーとして大きな貢献を果たしてくれたアゼルバイジャンとアリエフ大統領に対し特に感謝したい。」と述べた。

アリエフ大統領は、「アゼルバイジャンとセルビアは戦略的パートナーとしての関係を急速に強化してきた。本日の式典は我々二国間の友情の証である。このパイプライン接続によって、セルビア、ブルガリアのみならず、欧州のエネルギー安全保障が強化される。アゼルバイジャンは2027年までに欧州向けの天然ガス輸出を倍増させる意向である。」と述べた。

ラデフ大統領は、「このパイプライン整備は単なるインフラ整備事業の枠に収まるものではない。これはブルガリア、セルビア、アゼルバイジャンの3カ国による協力関係の象徴であり、我々は協働して欧州におけるエネルギー市場の構造を変革していく。このガスパイプラインは、ブルガリアとセルビアだけではなく、この地域全体にとってエネルギー源の多様化とエネルギーの安定供給を保証するものでる。」と述べた。

ギアウフレットEU大使は、「本日我々は、セルビアのエネルギー源を多様化しエネルギー安全保障を強化するうえでの重要な節目を迎えた。セルビアはブルガリアと連結され、それは即ちセルビアがEUと連結されたことを意味しており、このパイプラインはEUとセルビアの双方にとって戦略的な重要性を有している。」と述べた。

セルビアは現在、国内で使用する天然ガスの大部分をロシアからの輸入に頼っている。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、セルビアは欧米主要国より、ロシアへのエネルギー源の依存を解消するためにガス及び石油供給元を多様化させることを求められている。

新たに接続されたパイプラインは年間18億立方メートルの輸送能力を有しており、これは現在のセルビアの年間ガス消費量の約60%に相当する、

セルビアは既にアゼルバイジャンとの間で天然ガス購入契約を締結しており、2026年までは年間最大4億立方メートル、2027年以降は最大10億立方メートルのアゼルバイジャン産天然ガスを購入することが可能となっている。

一方で、現在のセルビアの年間ガス消費量は約30億立方メートルであり、2030年までには40億立方メートルまで消費が拡大すると予想されている。そのため、アゼルバイジャン産ガスの輸入開始後も、当面の間は国内需要を満たすためにロシア産ガスの購入が必要になると予想されている。

セルビア政府プレスリリース(英語)

セルビア大統領府プレスリリース(セルビア語)

(アイキャッチ画像出典:セルビア政府ウェブサイト)

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