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スルプスカ共和国で新政権発足-国家政府との対立深刻化の懸念

9月2日、ボスニア・ヘルツェゴヴィナを構成する二つの政体のうちの一つであるスルプスカ共和国(Republika Srpska)の国民議会は、サヴォ・ミニッチ(Savo Minić)元農相を首班とする新内閣を承認した。しかし、今回の組閣は8月に大統領職を解任されたミロラド・ドディック(Milorad Dodik)氏によって主導されたものであり、新政府の合憲性を巡る問題や、ボスニア・ヘルツェゴビナ国家レベルの機関との政治的対立がさらに深刻化するとの懸念が広がっている。

今回の新政権発足は、8月にラドヴァン・ヴィシュコヴィッチ(Radovan Visković)前首相がドディック氏との合意に基づき辞任したことを受けたものである。ドディック氏は、自身のRS大統領解任を認めておらず、RS議会はこの問題の是非を問う住民投票の実施を可決するなど、中央政府への対決姿勢を鮮明にしている。

一方で、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ中央選挙管理委員会は、11月23日にスルプスカ共和国の早期大統領選挙を実施すると発表しており、法的な正当性を巡る混乱が続いている。

ミニッチ新内閣には16人の閣僚が名を連ねた。ゾラ・ヴィドヴィッチ(Zora Vidović)財務相やペタル・ジョキッチ(Petar Đokić)エネルギー・鉱業相など前政権からの留任組がいる一方、新たな顔ぶれも加わった。特に注目されるのは、ボスニア最大の輸出企業であるアルミニウム生産会社「アルミーナ」(Alumina d.o.o. Zvornik)の経営者であるゾラン・ステヴァノヴィッチ(Zoran Stevanović)氏が運輸・通信相として入閣した点である。

1995年のデイトン合意によって終結したボスニア紛争後、ボスニア・ヘルツェゴヴィナは高度な自治権を持つスルプスカ共和国とボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦(Federation of Bosnia and Herzegovina)という2つの構成体から成る国家として運営されてきた。しかし、長年にわたりスルプスカ共和国の分離主義的な動きを主導してきたドディック氏の影響下で発足した新政権は、この脆弱な国家システムをさらに揺るがしかねない。

今後、11月に予定されている大統領選挙の行方が、ボスニア・ヘルツェゴビナ全体の安定を占う上で重要な焦点になると予想されている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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