
セルビア首相が大規模抗議デモの中で辞任を表明
1月27日、セルビアのヴチェヴィッチ(Miloš Vučević)首相は、昨年11月に北部都市ノヴィ・サド(Novi Sad)で発生した鉄道駅舎屋根崩落事故を受けて全国に広がった学生主導の大規模抗議デモの中、辞任を発表した。
ヴチェヴィッチ首相は2012年から2022年までノヴィ・サドの市長を務め、現在は与党セルビア進歩党(Srpska napredna stranka、SNS)の党首を務めている。ヴチェヴィッチ首相は、1月27日夜にノヴィ・サドで学生グループが野球バットを持った4人の男に襲撃され、学生の一人が重傷を負ったことを受けて辞任すると述べた。
「与党セルビア進歩党はこの状況において最高レベルの責任を示さなければならない。そのために私は辞任する」とヴチェヴィッチ首相は述べた。また、ノヴィ・サドのジュリッチ(Milan Đurić)市長も同時に辞任すると付け加えた。
ヴチェヴィッチ首相の辞任は、ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領が27日に政府の内閣改造を求めた後に発表された。ヴチッチ大統領は、ヴチェヴィッチ首相及びブルナビッチ(Ana Brnabić)議会議長との共同記者会見において、「政治的に困難なこの時期に、誰が戦う準備ができていて誰がそうでないかが明らかになったため、緊急の内閣改造を求める」と述べた。またヴチッチ大統領は、閣僚の少なくとも半数が交代することを期待していると付け加えた。
27日には、学生数千人が農民や市民と共に、首都ベオグラードの主要交通拠点であるアウトコマンダ(Autokomanda)交差点で24時間の道路封鎖を開始した。国内メディアによると、この封鎖は28日の午前10時に終了した。
学生等による道路封鎖は、11月1日にノヴィ・サド英のコンクリート製の屋根が崩落し、14人が死亡、3人が重傷を負った(後にうち1名が死亡)事故以来、学生たちが組織した一連の抗議行動の一部として実施された。
学生たちは毎日、通常は全国の都市の主要な横断歩道で15分間黙祷し、犠牲者を追悼し、事故の責任を問うために抗議を続けてきた。抗議活動のほかにも、学生たちは国内5つの国立大学の数十の学部へのアクセスをブロックしている。
27日の記者会見で、ヴチッチ大統領は政府が学生の要求をすべて満たすと述べた。これには、ノヴィ・サド駅の改修工事に関連するすべての文書の公開、責任者の起訴、2025年の教育予算を20%増加させることなどが含まれるとされている。ヴチッチ大統領はまた、抗議中に逮捕されたすべての学生と教授に恩赦を与えると述べた。
抗議運動に対応して、政府は12月にノヴィ・サド駅の改修工事に関連する文書の公開を開始した。また12月にはノヴィ・サド検察局が、ヴェシッチ(Goran Vesić)前インフラ大臣を含む13人を事故に関連して起訴した。
SNSが率いるセルビアの連立政府は、2023年12月に行われた繰り上げ選挙後の2024年5月に発足した。SNSは2012年からセルビアで政権を握っている。SNSの創設者の一人であるヴチッチ大統領は、約9年間大統領を務めている。
ヴチェヴィッチ首相の辞任は、セルビア議会によって正式に承認される必要がある。セルビア憲法によれば、議会が首相の辞任を確認した後、大統領は30日以内に新政府を形成するか、または早期選挙を実施する必要がある。セルビア議会は2025年3月19日にヴチェヴィッチの辞任を正式に承認し、4月18日までに新政府が形成されない場合は早期選挙が実施される見通しとなっている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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