北マケドニアがSEPA加入を正式に申請:西バルカンでは初
7月11日、北マケドニア中銀(National Bank of North Macedonia)は、単一ユーロ決済圏(Single Euro Payment Ares, SEPA)への加入申請を欧州決済評議会(European Paymemt Council, EPC)に提出したと発表した。これは、同国の金融システムの発展とヨーロッパ経済圏への統合に向けた重要な一歩となる。
SEPAは、ユーロ圏を中心とする欧州の決済システム統合プロジェクトであり、現在、EU27カ国に加え、英国、ノルウェー、スイス、アイスランド、アンドラ、モナコ、リヒテンシュタイン、サンマリノ、バチカン市国の計36カ国が加盟している。SEPAへの加入により、参加国間でユーロ建ての決済を国内取引と同様に安全かつ効率的に行うことが可能となる。
今回の北マケドニアのSEPA加入申請は、西バルカン6カ国が2024年3月に合意した、金融取引手数料削減に向けた動きの一環である。西バルカン諸国は、地域内での取引コスト削減のため、各国内の関連規制を2024年内にSEPAに準拠した形へ改正することに合意している。
この取り組みは、欧州委員会が2023年11月に採択した西バルカン新成長計画(New Growth Plan for the Wetern Balkans)の一部でもある。同計画は、西バルカン諸国がEU加盟のメリットを前倒しで享受することを可能とし、西バルカンの経済成長を促進し、加盟プロセスを支援することを目的に総額60億ユーロの資金を投資するものであるが、実施の前提条件として、西バルカン地域内の問題を解決することが求められている。その問題の一つが地域内の取引コストの高さであり、現在、西バルカン諸国間の取引コストはEU諸国間の6倍に達しているとの試算が示されている。
アンゲロフスカ=ベジョスカ(Анита Ангеловска-Бежоска)中銀総裁は「昨年、北マケドニア国内銀行の対外支払いの87%、対内支払いの77%がユーロ建てで行われた」と述べ、SEPAへの加入は、北マケドニアの市民や企業にとって大きな利点があると強調した。同総裁は具体的なメリットとして、SEPA加盟国との間でのより安価で迅速・安全なユーロ建取引の実現、ユーロ建取引における手続きの簡素化・透明性の向上・消費者保護の強化、現金使用機会の削減と電子決済への移行促進に伴う取引コスト削減と利便性向上などを挙げた。
北マケドニアのSEPA加入申請の準備作業は、世界銀行が実施する西バルカン決済近代化プロジェクトの下で支援された。北マケドニアは西バルカンでは初のSEPA加入申請国となっており、今後は他の西バルカン諸国も同様にSEPAへの加入を申請するものと予想される。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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