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NIS、2025年上半期は赤字転落-米国制裁響きブルガリア事業から撤退へ

7月30日、ロシア資本のセルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije – NIS)は2025年上半期(1-6月期)決算を発表し、36億ディナール(約3,070万ユーロ)の純損失を計上したと明らかにした。前年同期の53億ディナールの純利益から一転して赤字となり、米国の経済制裁が同社の業績に深刻な影響を及ぼしていることが浮き彫りになった。これを受け、NISはブルガリアの小売事業から撤退することも決定した。

NISは2025年上半期決算報告に関するプレスリリースの中で、2025年上半期は「極めて複雑な状況下」での操業を強いられたと説明した。最大の要因は米国による経済制裁であり、これにより一部の法人顧客との契約が停止するなど、石油製品の販売量が前年同期比で8%減少した。特に卸売販売は20%の大幅減となった。このほか、世界の原油価格が前年同期比で15%下落したことや、子会社の石油化学メーカー、HIPペトロヘミア(HIP Petrohemija)が計上した47億ディナールの損失も業績を圧迫した。これらの要因が複合した結果、売上高は前年同期比27%減の1,458億ディナール、EBITDA(利払い・税・減価償却前利益)は同55%減の102億ディナールに落ち込んだ。

厳しい経営環境を受け、NISは事業ポートフォリオの見直しに着手している。同社取締役会は、ブルガリアで22ヶ所のガソリンスタンドを運営する完全子会社「NISペトロル・ブルガリア」の売却を承認した。同国での下流事業(小売事業)の不振が理由で、NISは以前からブルガリアおよびルーマニア市場からの撤退を検討していた。売却を円滑に進めるため、NIS本体からブルガリア子会社への貸付金を資本金に転換する手続きも開始している。

NIS経営陣は、厳しい事業環境にもかかわらず、国内市場への安定供給と従業員の雇用の維持という優先事項は達成したと強調した。また、会社の継続能力(ゴーイング・コンサーン)について、現時点で重大な不確実性はないとしつつも、今後の状況変化が業績に大きな影響を与える可能性を認めている。

米国の制裁は依然として同社の最大の経営リスクであり、その適用は5度にわたり延期され、現在は8月27日が期限となっている。周辺国の不採算事業から撤退し、セルビア国内の基幹事業に経営資源を集中させることで立て直しを図る構えだが、制裁問題の根本的な解決が見えない限り、同社の先行きは不透明なままとなっている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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