
NISは対露制裁免除の米当局判断待ちで精油所稼働を一時縮小へ
11月28日、セルビアのジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ(Dubravka Đedović Handanović)鉱業・エネルギー大臣は、セルビア唯一の石油精油所であるパンチェヴォ精油所について、米国当局による制裁免除の判断を待つため、12月2日まで「温態循環(warm circulation)」と呼ばれる待機モードでの稼働を維持する方針を明らかにした。この措置は、同精油所を運営するセルビア石油産業(Naftna Industrija Srbije:NIS)が、ロシア企業による多数株式保有を理由とした米国からの制裁対象となっていることに起因するものである。
セルビア国営タンユグ通信(Tanjug)ウェブサイトに掲載された動画内でジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣が述べたところによると、セルビア政府およびNISは現在、ワシントンD.C.の米国財務省外国資産管理室(Office of Foreign Assets Control:OFAC)からの回答を待っている状況にある。仮に肯定的な回答、すなわち制裁の適用除外(ウェーバー)が得られた場合、NISは現在の計画および備蓄状況に基づき、早ければ12月15日にもディーゼル燃料の出荷を再開できる見通しだとされている。OFACによるNISの事業継続許可に関する決定は、ジェドヴィッチ=ハンダノヴィッチ大臣は、早ければ同日夜、あるいは翌週中にも下されるとの見通しを示している。
NISはこれに先立し、25日には原油不足を理由にパンチェヴォ精油所が操業レベルを低下させる温態循環モードに入り、操業停止に向けた準備を開始したと発表していた。
セルビア国内の石油需要の大半を賄う同精油所は、クロアチアを経由する原油輸入ルート(JANAFパイプライン)に依存しているが、数度の延期を経て先月発効した米国による対NIS制裁により、このルートが遮断された状態にある。米国財務省は2025年1月、NISのロシア資本比率の高さを問題視し、同社を制裁対象に指定していた。
現在のNISの株主構成は、ロシアのエネルギー大手ガスプロム(Gazprom)の石油部門であるガズプロム・ネフチ(Gazprom Neft)が44.85%を保有し、ガスプロムが間接的に支配するサンクトペテルブルク拠点のインテリジェンス(Intelligence)社が11.3%を保有しているため、ロシア側の持ち分は過半数に達している。セルビア政府の保有比率は29.87%であり、残りは少数株主が保有している。
NIS側は先週、所有権構造の変更に関する交渉が進行中であることを明らかにしており、この交渉に基づきOFACに対して操業ライセンスの延長を再申請していた。
OFACはNISからのロシア企業の完全撤退を求めており、これまでは所有権変更交渉のために限定して2026年2月13日までの承認を与えていた経緯がある。現在、ロシア側持ち分の売却先としては、アラブ首長国連邦のアブダビ国営石油会社(Abu Dhabi National Oil Company:ADNOC)やハンガリーのMOL(MOL Hungarian Oil and Gas Public Limited Company)などが取り沙汰されている。
この情勢に対し、セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は、仮にロシア側が第三者との売却合意に至らなかった場合、2月13日までにセルビア政府が「適正価格」で株式を取得し、NISの経営を引き継ぐ用意があるとの姿勢を示している。
NISはパンチェヴォでの精油事業に加え、セルビア国内で327か所のガソリンスタンドを持つ最大の燃料小売ネットワークを運営しており、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、ルーマニアでも事業を展開、約1万4000人の雇用を抱える地域経済の重要企業であるため、その行方は西バルカン全体のエネルギー安全保障に直結する懸案事項となっている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)





































































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