北マケドニアがブルガリア企業を通じて非ロシア産天然ガスを調達:ブルガリアとの間のガス通過料問題は未解決

12月7日付現地報道によれば、国営北マケドニア電力公社(ESM)は、暖房用燃料として12月に調達する天然ガスについて、ブルガリア企業グレイストーン(Grasystone Bulgaria)を通じてアゼルバイジャン産及び米国産ガスを購入する事を明らかにした。これにより、北マケドニアへのガス供給におけるロシア産ガスの比率は低下する見通しとなった。

ESMは12月分の暖房用天然ガス調達入札の公示に際し、非ロシア産ガスであることを明示的に保証するか、あるいはブルガリアに対するガス通過料を応札者が支払うことを要件としていた。

ブルガリアは10月13日に、ブルガリア領内パイプラインを経由するロシア産天然ガスについて、1MWh辺り20レバ(約10ユーロ)の通過料を輸出先の第三国より徴収することを決定した。これに対し、北マケドニアのほかセルビア、ハンガリーなど、ブルガリア経由のロシア産天然ガスに依存する国々は一斉に反発しており、北マケドニア政府はこの問題をEUに対し申し立てるとともに、ブルガリアに対し補償を要求する意向を示していた。

北マケドニアは天然ガスの大規模貯蔵施設を保有しておらず、国内ガス需要の大部分が、ロシアから黒海を経由してトルコに向かう「トルコ・ストリーム」パイプラインを通じて供給されるロシア産ガスによって充足されており、北マケドニア政府はロシア国営のガスプロム社との間で2030年までの天然ガス調達契約を結んでいる。

セルビアとハンガリーは、ブルガリアの措置はこれら2カ国を狙い撃ちにするものだとしてブルガリアを強く非難しており、共同でこの問題をEU及び欧州エネルギー共同体に対し申し立ている。

ロシアのウクライナ侵攻とこれに対するEUの経済制裁を受け、ガスプロムはブルガリアへのロシア産天然ガス供給を2022年4月に停止したが、それ以降も、EUの経済制裁の例外とされているハンガリーやEU非加盟国のセルビア、北マケドニアなどに対しては、ブルガリア領内を通過する「バルカン・ストリーム」パイプラインなどを通じてロシア産天然ガスが供給されている。

ブルガリアの措置は、欧州のエネルギー市場からロシアを締め出しガスプロムの業績にダメージを与えることが目的と考えられているが、ロシア産ガスに依存する周辺国の同意を得ないまま実行されたことで、大きな反発を招いている。

一方でセルビアは、アゼルバイジャンとの間で天然ガス購入契約を結び、またアゼルバイジャン産及びカスピ海産天然ガスを輸送するため、「バルカン・ストリーム」とは異なるガスパイプラインのブルガリアとの接続工事を完了させており、ロシア産ガスへの依存度を低下させる動きを見せている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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