
欧州委員会がボスニア・ヘルツェゴヴィナの改革アジェンダを承認-約9億7,600万ユーロの財政支援実現へ
12月4日、欧州委員会(European Commission)は、EUによる対西バルカン諸国向けの財政支援枠組みである「改革・成長ファシリティ(Reform and Growth Facility)」に基づき、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ(BiH)が提出した「改革アジェンダ」を承認したと発表した。これにより、2024年から2027年の期間におけるBiHへの財政支援として、総額9億7,659万ユーロのEU資金へのアクセスが開かれることとなる。
欧州委員会プレスリリースによれば、この「改革アジェンダ」は2025年9月30日にBiH当局から提出されたものであり、欧州委員会による審査の結果、ファシリティ規則の目的を満たすものと結論付けられた。具体的には、グリーン移行およびデジタル移行の加速、民間セクターの育成、人材の定着、そして基本的権利と法の支配の強化といった優先的な改革措置が盛り込まれている。
承認された資金の内訳は、返済不要の無償資金協力(グラント)が約2億8,000万ユーロ、融資(ローン)が約6億9,600万ユーロとなっている。この資金配分に関しては、当初の配分額から10%の削減が行われた。これは、BiH側における「改革アジェンダ」の交渉と提出が遅れたことを受け、本制度の成果主義的な性質を維持するために欧州委員会が決定した措置であるとされている。
BiHの「改革アジェンダ」は大きく4つの政策分野で構成されている。第一に「グリーンおよびデジタルへの移行」であり、これには脱炭素化、再生可能エネルギーの導入、重要インフラのサイバーセキュリティ強化などが含まれている。第二に「民間セクターの開発とビジネス環境」であり、公営企業のガバナンス強化やビジネス環境の改善が目標とされる。第三に「人的資本の開発」であり、教育の質の向上や労働市場へのアクセス改善、若年層の雇用促進などが焦点となっている。第四に「基本的権利と法の支配」であり、司法の独立の強化、汚職対策、組織犯罪対策、選挙制度改革などが含まれる。
実際の資金の拠出にあたっては、条件付きのアプローチが採用されている。BiHがファシリティ協定およびローン協定に署名・批准し、同協定に定められた前提条件を満たすことで、総額の7%に相当する事前融資(プレファイナンス)が利用可能となる。その後の資金拠出は、半年ごとに設定された改革の進捗目標(定量的・定性的ステップ)の達成状況に基づいて決定される。
BiH以外の西バルカン5カ国(アルバニア、コソヴォ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア)については、すでに2024年10月に改革アジェンダが承認済みであり、BiHは地域内で最後発の承認となった。2024年3月にEU理事会(European Council)が同国との加盟交渉開始を決定して以降、今回の承認はBiHのEU統合プロセスにおける重要な一歩となる。
欧州委員会はBiHに対し、協定の早期署名と批准、そして改革の着実な実施を求めている。特に、法の支配や民主主義の機能強化といった「基本的事項(Fundamentals)」の分野における改革は、EU加盟に向けたプロセスの中核をなすものであり、同国の社会経済的な収斂を加速させる上で不可欠な要素であると位置づけられている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)



































































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