欧州委員会がボスニアのEU加盟進捗報告書を発表:国内改革の停滞を指摘
10月30日、欧州委員会は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナに関する2024年版のEU加盟交渉進捗報告書を公表した。
報告書において欧州委員会は、「2023年後半から2024年初頭にかけて、ボスニアは重要な改革を実施しEU加盟に向けて前進した。しかし、2024年4月から10月にかけては、政治的論争や地方選挙運動の影響で改革の進展が停滞した」と評価した。
欧州委員会は、ボスニアに対し「EUの法体系(アキ・コミュノテール)と欧州基準に沿った改革を確実に進めるため、断固とした行動を継続する必要がある」と指摘し、国内改革の断行を求めている。
欧州委員会はまた、EUが策定した「西バルカン新成長計画」及びその資金援助スキームである「改革・成長ファシリティ」に基づくプロジェクトをボスニアが実施可能となるため、資金援助の前提条件とされている「改革アジェンダ」を早急に成立させ欧州委員会に提出するよう、ボスニアに対し求めた。
EUは先月、ボスニア以外の西バルカン5カ国の改革アジェンダを承認しており、これによって5カ国は改革・成長ファシリティを通じた総額60億ユーロのEUからの資金援助を利用可能となった。しかしボスニアは、国家を構成する二つの政体(エンティティ)のうちの一つであるスルプスカ共和国(セルビア人側)のドディック(Milorad Dodik)大統領が、100項目以上ある改革アジェンダのうち憲法裁判所裁判官任命及び憲法裁判所決定の承認の2項目について受け入れを拒否しており、またボシュニャク系政党である民主行動等(SDA)も4つの行政区(カントン)首相を通じて改革アジェンダに反対したことで、EU側が定めた期限までに改革アジェンダを提出出来ず、西バルカンで唯一、改革・成長ファシリティを通じた援助を得られずにいる。
ボスニアのEU加盟交渉の見通しについて、欧州委員会は、「ボスニアとの交渉枠組の準備は既に進められており、ボスニアが、2022年10月に欧州委員会より勧告された関連手続きを全て完了し次第、EU理事会での採択に掛けられる」と述べている。
EU理事会は今年3月にボスニアとのEU加盟交渉か開始を決定しており、現在ボスニアは、EUが定める個別政策分野(チャプター/クラスター)毎の実質的な交渉開始を待っている状態にある。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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