欧州委員会がボスニアを除く5カ国の改革アジェンダを承認:60億ユーロのEU資金へのアクセスが可能となる

10月23日、欧州委員会は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナを除く西バルカン5カ国(アルバニア、コソヴォ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア)が提出した「改革アジェンダ」を承認したと発表した。これにより、5カ国は、EUが策定した西バルカン成長計画の下で、EUによる総額60億ユーロの「改革・成長ファシリティ」からの資金援助を受けることが可能となった。

欧州委員会プレスリリースによれば、「改革・成長ファシリティ」からの拠出は、西バルカン各国がEUとの整合性を図るために実施を約束した改革の完了に応じて行われる。なお、ボスニア・ヘルツェゴビナは、西バルカンにおいて有効な改革アジェンダをまだ提出していない唯一の国となっており、欧州委員会はボスニアの「改革アジェンダ」完成に向けた支援を継続するとしている。

昨年11月、欧州委員会は、EU加盟国としての権利や権益の一部をEU加盟前に利用可能とすることで、西バルカンの経済成長を加速させ、西バルカン地域内での共通市場創設及びEU単一市場との漸進的統合を図ることを目的とした「西バルカン新成長計画」を策定している。さらに、この成長計画の下で西バルカン各国の改革を支援するための具体的な資金拠出スキームとして、今年5月に「改革・成長ファシリティ」創設が正式に決定され、EUによる新たな西バルカン支援体制が稼働することとなった。

参考記事

フォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)欧州委員長は、「西バルカン諸国による改革アジェンダへの取り組みに感銘を受けた。これは成長計画の成功に向けた彼らのコミットメントを示すものであり、西バルカン諸国の経済をEU経済に近づけるためのロードマップであり、西バルカンの企業にEU単一市場での競争のための機会と手段を提供するものである。これは全ての関係者に利益をもたらす取り組みであり、西バルカンのEU加盟に向けた大きな前進となる」と述べた。

欧州委員会によれば、改革アジェンダは法の支配、ガバナンス、デジタル・グリーン移行、人的資本開発、ビジネス環境の改革に焦点を当てており、また西バルカン各国は「改革・成長ファシリティ」を通じた資金提供の対象となる投資案件のリストを作成している。「改革・成長ファシリティ」からの実際の拠出は年2回、西バルカン各国からの要請に基づき、関連する支払い条件、前提条件、マクロ金融の安定性や健全な公共財政管理などの一般条件の達成を欧州委員会が確認した後に実施される。またセルビアとコソヴォに対しては、「セルビア・コソヴォ間の関係正常化に向けた建設的な取り組み」という追加的な条件が適用される。

欧州委員会は今後、各国との個別的な融資・ファシリティ契約の締結を進め、各国は「改革・成長ファシリティ」の下で予定されている総額の最大7%までの事前融資を要請することができる。現時点での暫定的な配分額によると、アルバニアは9億2,210万ユーロ、コソヴォは8億8,260万ユーロ、モンテネグロは3億8,350万ユーロ、北マケドニアは7億5,040万ユーロ、セルビアは15億8,600万ユーロを引き出すことができる。ボスニア・ヘルツェゴヴィナは、「改革アジェンダ」の欧州委員会への提出と承認を条件に10億8,500万ユーロを引き出すことが可能となる見込みである。

「改革・成長ファシリティ」は、EU予算から拠出される20億ユーロの無償資金及び40億ユーロの譲許的融資によって構成され、2024年から2027年の期間をカバーする。また60億ユーロの資金のうち少なくとも30億ユーロは、EUと西バルカン諸国が共同で運営する「西バルカン投資枠組(WBIF)」を通じた投資案件に充てられる予定となっている。

北マケドニア、モンテネグロ、セルビア、アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナはEU加盟候補国である。またコソボは2022年12月にEU加盟を申請している。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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