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【エルステ・グループ分析】イラン情勢の緊迫化と中東欧・西バルカン経済への影響:現時点では限定的だが、エネルギー価格が波及の主因に

3月2日、オーストリアの金融機関エルステ・グループ(Erste Group Bank AG)は、先週末に発生したイスラエルおよび米国によるイランへの空爆開始を受け、中東欧地域への経済的影響に関する初期評価を公表した。

エルステ・グループが公表した分析によれば、セルビア、クロアチア、ルーマニア、スロヴェニアを含む中東欧・南東欧の計8カ国に対する直接的な影響は現時点では限定的であるものの、エネルギー価格の上昇を通じた間接的な影響が懸念されている。ホルムズ海峡は世界の石油需要の約20%が通過する要衝であり、封鎖が長期化すればインフレ圧力が高まり、各国の中央銀行による金融緩和のペースが抑制されるリスクがある。月曜日の欧州市場では天然ガス価格も大幅に上昇しており、エネルギー集約型産業が集中する欧州経済の成長見通しを減退させる要因となっている。

もっとも、エルステは原油価格の上昇は一時的なものにとどまると予測している。その根拠として、ホルムズ海峡の長期的封鎖は石油の主要輸入国である中国や、国内の価格高騰を避けたい米国の利益に反すること、またイラン側も封鎖を維持する能力が数週間程度に限られることが挙げられている。さらに、米国や欧州連合(EU)には十分な戦略的石油備蓄があり、市場の混乱を鎮静化させるために放出される可能性があることも指摘された。

欧州中央銀行(European Central Bank)の対応について、エルステ・グループは今回の事態を「一時的な供給ショック」と位置づけ、現在の金融政策を維持する可能性が高いとみている。ただし、インフレの上振れリスクと経済成長の下振れリスクが同時に高まっていることから、今後の不透明感は増している。

株式市場では、特に石油輸出の依存度が高いアジア市場が、欧州や米国の市場に比べて強い下落圧力にさらされている。一方で、世界最大の石油生産者であるサウジアラムコ(Saudi Aramco)の株価が上昇するなど、エネルギーセクターは引き続き市場平均を上回るパフォーマンスを示すとの見方が示された。また、地政学的リスクの高まりを背景に、安全資産とされる金価格やスイスフランは堅調に推移している。

中東欧および西バルカン諸国の経済への具体的な波及経路としては、企業心理の一時的な悪化や、企業の資金調達におけるリスクプレミアムの上昇が懸念される。特にエネルギー輸入国であるユーロ圏諸国では、生産者物価の上昇が実体経済を圧迫するリスクを注視する必要がある。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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