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ドディック前RS大統領が自身の後継候補を指名-ボスニア国家裁判所による有罪判決を事実上受諾

9月30日、ボスニア・ヘルツェゴヴィナを構成する2つの政体のうち、セルビア人多数派地域であるスルプスカ共和国(Republika Srpska, RS)の前大統領であるドディック(Milorad Dodik)氏が率いる与党、独立社会民主同盟(Savez nezavisnih socijaldemokrata, SNSD)は、11月23日に予定されているRS大統領選挙で、ドディック氏の後継候補者を選出した。これは、今年8月にボスニア・ヘルツェゴヴィナ国家裁判所がドディック氏に対して下した有罪判決を受け及び公職からの追放決定を実質的に認めた形となる。

ドディック氏はロシアで開催中の「世界経済と政治に関する国際フォーラム」で、RS大統領選挙におけるSNSDの候補者が、ドディック氏の最側近の一人であるシニシャ・カラン(Siniša Karan)氏であることを確認した。ドディック氏は、「我々はこれを(RS議会におけるSNSDの)連立パートナーに提案する。そして我々の候補者は、スルプスカ共和国の科学技術開発・高等教育大臣であるシニシャ・カラン氏となる。この点について合意に達する必要がある」と述べた。

出典:RTRS vijesti

カラン氏は、以前にRS内務大臣を6年間務めており、現在はRS科学技術開発・高等教育大臣の職にあるが、ドディク氏の任期が正式に取り消された後、どのドディック氏によって任命された現在のRS首相であるサヴォ・ミニッチ(Savo Minic)氏によって任命されたため、その閣僚としての地位は憲法違反とされている。

また、カラン氏は、1995年のボスニア紛争を終結させたデイトン和平協定(Dayton accords)の履行を妨害したとして、米国から制裁を受けている人物でもある。

ドディック氏のRS大統領としての権限は、2023年7月にデイトン合意の履行を監督する国際社会の代表者であるクリスティアン・シュミット(Christian Schmidt)上級代表(High Representative)が出した決定に反抗したとして、8月1日に有罪判決を受け、懲役1年およびRS大統領職を含む公職に6年間就くことを禁止されたのを受けて、ボスニアの選挙管理機関である中央選挙管理委員会(Central Election Commission)によって8月18日に取り消されていた。

ドディク氏は裁判所の判決を拒否する姿勢を示しつつも、法的な権利を行使して懲役刑を36,500ボスニア・マルク(約18,600ユーロ)の罰金に換えた。ドディク氏は当初、裁判所と中央選挙管理委員会の決定を認めず、RS大統領選挙のボイコットを呼びかけ、自身が留任すべきかどうかを問う住民投票を実施するとまで発言し、RS議会が住民投票実施を可決していた。

しかし、今回の後継者指名によって、ドディック氏が自身に対する有罪判決と今後6年間国内の公職に就くことができないという事実を最終的に認めたことになるため、この住民投票は実際には実施されないものと見られる。

ドディック氏は、当初は中央選挙管理委員会の決定を受け入れないという結論をRS議会で採択させたが、その後、国民議会にその結論を修正するよう促していた。

また、ドディック氏は自身が発言した後に撤回したことの全てについて、主にRS野党、そして「サラエヴォの政治家たち」、特にボシュニャク系政党を非難している。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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