
セルビアで反政府デモと警察の衝突継続、与党事務所に放火も-大統領は強硬姿勢での対応を表明
8月17日、セルビアのヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領は記者会見を開き、国内で激化する反政府デモに対し、断固たる措置を講じて秩序を回復する意向を表明した。これは、前日の16日夜に西部ヴァリェヴォ(Valjevo)市で与党セルビア進歩党(Srpska Napredna Stranka, SNS)の事務所が放火されるなど、暴力行為がエスカレートした事態を受けたものである。
ヴチッチ大統領は国営放送RTSを通じて、「今後3、4日のうちに、我々の時に驚くべき決定を目にすることになるだろう。その後、極めて断固たる行動が見られるだろう。我々は国の秩序と平和を回復するため、あらゆる手段を用いる」と述べた。さらに、今後10日間ですべての騒乱参加者を逮捕する方針も示唆した。一方で、非常事態宣言の導入については現時点では検討していないと付け加えた。
セルビアでは、2024年11月にノヴィ・サド(Novi Sad)駅でコンクリート製の天蓋が崩落し16名が死亡した事故をきっかけに、政府の汚職体質や責任の所在を問う学生主導の抗議活動が9ヶ月にわたって続いていた。デモ参加者は、ヴチッチ政権が三権を支配し、メディアや政敵を抑圧していると非難している。
抗議活動は、8月第2週に北西部ヴルバス(Vrbas)で政権支持者と反対派が衝突し、複数の負傷者が出たことで一気に激化した。16日にはヴァリェヴォで、高校生らが呼びかけた抗議デモが暴徒化し、SNS事務所への放火に加え、市庁舎や検察庁の建物も破壊された。首都ベオグラード(Belgrade)やノヴィ・サドなど全国各地でも抗議活動が行われ、一部ではデモ隊と治安部隊が衝突した。ダチッチ(Ivica Dačić)内務大臣によると、16日の騒乱で警官1名が負傷し、18名が逮捕されたとされている。
この事態に対し、政府高官からは非難の声が相次いでいる。マツット(Đuro Macut)首相は17日、「国家機関への攻撃と国家財産の完全な破壊は、司法への明白な打撃であり、国家の基盤を揺るがす深刻な事態だ」との声明を発表し、首謀者と実行犯を厳罰に処す考えを示した。またジューリッチ(Marko Đurić)外相も同日、ヴァリェヴォでの事件を強く非難し、暴力の扇動を停止するよう求める声明を発表した。
他方で、デモ参加者の間では警察による過剰な暴力への反発が強まっている。ヴァリェヴォでは、14日のデモに参加した若者が警官に警棒で殴打される事件が複数報告されており、市民の怒りを増幅させている。著名なバスケットボール選手や俳優らがデモに参加する姿も見られ、抗議の輪は広がりを見せている。
ヴチッチ大統領は、一連の抗議活動が国外からの扇動と資金提供によるものだと繰り返し主張しており、次期議会選挙は規定通り2027年春までに実施されるとの立場を崩していない。政府が強硬姿勢を鮮明にするなか、市民の反発は収まらず、情勢は依然として緊迫している。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
この記事へのコメントはありません。