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米国、セルビアの原子力開発への協力表明 ― 各国がパートナーシップを競う

7月17日、米国政府は、セルビアが推進する原子力プログラムの準備を支援し、原子力エネルギー分野における協力強化のための政府間覚書(MOU)を締結する用意があることを表明した。35年ぶりに原子力開発の扉を開いたセルビアに対し、フランス、ロシア、中国、韓国なども協力姿勢を示しており、エネルギー安全保障の確保を目指すセルビアを舞台に、各国のパートナーシップ獲得競争が激化する様相を呈している。

この米国の意向は、米国務省のジャスティン・P・フリードマン(Justin P. Friedman)原子力エネルギー商業競争力担当上級顧問らが、セルビア放射線・原子力安全規制局(Serbian Radiation and Nuclear Safety and Security Directorate, SRBATOM)を訪問した際に伝えられた。SRBATOMのプレスリリースによると、米国側は政府間MOUの締結に加え、ワークショップや研修プログラムの開催といった具体的な支援策を通じて協力を強化する用意があるとし、両者はこの分野における協力の大きな潜在性と相互の利益を確認した。

セルビアは、旧ユーゴスラヴィア時代の1989年から続いていた原子力発電所の建設禁止法を2024年11月に議会が撤廃し、原子力導入へ大きく舵を切った。この動きを受け、各国がパートナー候補として名乗りを上げている。

フランスの国営電力会社フランス電力(Electricite de France, EDF)は、セルビア政府の委託で実施した予備的技術調査の結果を最近報告した。それによると、今後15年から20年で原子力を国内の送電網に統合する可能性があり、それに先立ち、今後5年から7年をかけて法規制の枠組み整備や人材育成といった準備段階を進める必要があるとされている。

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一方で、ロシアの国営原子力企業ロスアトム(Rosatom)も以前からセルビアと協力関係にあり、小型モジュール炉(SMR)から大型原発まで幅広い技術提供を申し出ている。

また、2025年3月には中国原子能科学研究院(CIAE)がSrbatomと研究炉の廃炉や放射性廃棄物管理に関する協力覚書を締結したほか、韓国水力原子力(KHNP)とも原子力および水素分野での協定締結が間近と報じられており、セルビアが特定のパートナーに依存せず、多角的に協力を模索している状況がうかがえる。

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セルビア政府は、2024年7月に採択した「統合国家エネルギー・気候計画」において、2040年以降に総容量1,000メガワットの原子力発電を導入するシナリオを盛り込んでいる。石炭火力への依存からの脱却とエネルギー安全保障の強化という国家的な課題を背景に、セルビアが今後どの国の技術や資金を導入するかの決定は、同国の将来のエネルギー政策と国際関係を占う上で重要な焦点となる。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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