モンテネグロとアルバニアの単一ユーロ決済圏加入が決定:西バルカンからは初の加入
11月21日、欧州決済評議会(European Payment Council:EPC)は、モンテネグロとアルバニアが単一ユーロ決済圏(Single Euro Payment Area)に正式に加入したと発表した。
EPCはプレスリリースにおいて、「本日付を以て、モンテネグロとアルバニアはSEPAの地理的範囲に含まれることとなり、これによってSEPAがカバーする国は38カ国となった」と発表した。
SEPAは、ユーロ圏を中心とする欧州の決済システム統合プロジェクトであり、現在、EU27カ国に加え、英国、ノルウェー、スイス、アイスランド、アンドラ、モナコ、リヒテンシュタイン、サンマリノ、バチカン市国が加盟している。SEPAへの加入により、参加国間でユーロ建ての決済を国内取引と同様に安全かつ効率的に行うことが可能となる。
SEPAへの正式加入により、モンテネグロとアルバニアは、SEPAに基づく送金・口座振り込み(SEPA Credit Transfer:SCT)、即時送金(SCT Inst)、自動引き落とし(SEPA Direct Debit:SDD)といったユーロ建て決済スキームの利用が可能となる。
SEPAスキームによる実際の決済開始は、両国の金融機関によるSEPAスキームへの適合が完了した後に運用開始されると発表されており、EPCによれば、両国金融機関の適合は2025年4月以降に開始され、実際の運用開始日程は、その後に改めて発表される予定となっている。
SEPAへの加入は、地域内での越境決済に要する取引コストを軽減させるものと考えられており、EUは、西バルカン諸国のSEPA加入申請加入を積極的に支援している。西バルカン諸国は、地域内での取引コスト削減のため、各国内の関連規制を2024年内にSEPAに準拠した形へ改正することについて今年3月に合意している。
この取り組みは、欧州委員会が2023年11月に採択した西バルカン成長計画(Growth Plan for the Wetern Balkans)の一部でもある。同計画は、西バルカン諸国がEU加盟のメリットを前倒しで享受することを可能とし、西バルカンの経済成長を促進し、加盟プロセスを支援することを目的に総額60億ユーロの資金を投資するものであるが、実施の前提条件として、西バルカン地域内の問題を解決することが求められている。その問題の一つが地域内の取引コストの高さであり、現在、西バルカン諸国間の取引コストはEU諸国間の6倍に達しているとの試算が示されている。
EPCプレスリリースにおいて、モンテネグロ中銀のラドヴィッチ(Irena Radvić)総裁は、「SEPA加入はモンテネグロの金融制度にとって極めて重要な節目である。これにより、新たな経済機会の創出と家計と企業への実質的な恩恵がもたらされ、モンテネグロのEU加盟に向けた進展が促進されるだろう」と述べた。
またセイコ(Gent Sejko)アルバニア中銀総裁は、同じくEPCプレスリリースにおいて、「SEPA加入はアルバニアにとって歴史的な節目である。これは、欧州基準に適合するための長年に及ぶアルバニア政府、金融部門その他のパートナーの献身によって積み上げられた成果を羽根井している。SEPAへの加入は、アルバニアの金融と経済の発展に寄与し、これによってEU市場との更なる統合を促進することが期待される」と述べた。
今回、モンテネグロとアルバニアは西バルカンからは初となるSEPA加入国となった。このほか、北マケドニアは今年7月にSEPA加入を正式に申請している。また、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、コソヴォもSEPAへの加入を希望する意向を表明しているが、加入申請はまだ提出されていない。
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