【報道】CIA長官が西バルカン3カ国を訪問
各国報道によれば、バーンズ(William Burns)米国中央情報局(CIA)長官は、8月20日から23日にかけて、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、セルビア、コソヴォを相次いで訪問したとされている。このうち、コソヴォ訪問については、コソヴォ政府が公式にバーンズ長官の訪問を認めている。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ訪問
8月20日付けボスニア国内報道は、バーンズ長官が20日にサライェヴォを訪問したと報じた。このうち、「自由欧州放送(RFE/RL)」は、米国政府関係者の発言を引用する形で、バーンズ長官は主に、親露姿勢を強めるスルプスカ共和国の分離主義的な言動や傾向についてボスニア側要人と協議したと報じた。RFE/RL報道によれば、バーンズ長官はサライェヴォにおいて、大統領評議会メンバー、コナコヴィッチ(Elmedin Konaković)外相、ジュヴォ(Almir Džuvo)ボスニア治安情報庁長官等と会談したとされている。
コナコヴィッチ外相はRFE/RLに対し、「協議の内容については話せない部分もあるが、米国政府はボスニアの主権と領土一体性に対を完全に支持していることを確認した」と述べたとされている。
また同報道によれば、バーンズ長官と大統領評議会メンバーとの会談の際には、米国財務省から制裁対象に指定されているツヴィヤノヴィッチ(Željka Cvijanović)セルビア人メンバーも同席したと報じられている。
バーンズ長官のサライェヴォ訪問に関して、米国政府、ボスニア政府ともに公式発表は行っていない。
セルビア訪問
8月21日付けセルビア国内報道は、バーンズ長官が20日から21日にかけてベオグラードを訪問したと報じた。このうち、日刊紙ダナスの記事は、セルビア政府関係筋からの情報として、バーンズ長官の訪問に際してホスト役を務めたのはオルリッチ(Vladimir Orlic)治安情報庁長官であったと報じた。
一方で、ヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領やブチェヴィッチ(Miloš Vučević)首相等のセルビア要人とバーンズ長官が会談を行ったかは不明とされている。
バーンズ長官のベオグラード訪問に関して、米国政府、セルビア政府ともに公式発表は行っていない。
コソヴォ訪問
コソヴォ首相府は、クルティ(Albin Kurti)首相とバーンズ長官が22日に会談を行ったと発表した。同発表によれば、クルティ首相はバーンズ長官に対し、コソヴォと米国の共通関心事項に対するコソヴォのコミットメントを表明しつつ、また、コソヴォの経済、社会、民主主義の発展について説明したほか、コソヴォが国内治安上の課題に対し正当な法の強化を通じて成功裡に対処していることを強調した。
また、コソヴォ大統領府は、オスマニ(Vjosa Osmani)大統領がバーンズ長官と会談を行ったと発表した。
一方、バーンズ長官のプリシュティナ訪問について、米国政府は公式発表は行っていない。
CIA長官訪問の背景
バーンズ長官の西バルカン訪問とその背景について、各国メディアは専門家のコメントを交えつつ様々な推測を報じており、特にロシアの影響拡大への牽制を指摘する声が多く挙がっているほか、一方的行動によって欧米との関係が悪化しつつあるコソヴォ政府への圧力を指摘する向きもあるが、コソヴォ政府による発表を除いて公式発表が何もなされておらず、現時点で明確なことは分かっていない。
CIAを含む米国政府のインテリジェンス・コミュニティは、今年2月に発表した2024年の年次脅威報告(Annual Threat Assessment)の中で、「西バルカン地域はおそらく2024年中に、限定的な民族間暴力のリスク増大に直面する」と指摘しており、特にコソヴォにおけるセルビア人とアルバニア人の対立、スルプスカ共和国のボスニアからの事実上の離脱進展の可能性に言及している。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
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