モンテネグロ主要政党が内閣不信任案を議会に提出
8月3日、社会主義者民主党(DPS)、社会民主党・自由党(SDPーLP)、社会民主主義者党(SD)、アルバニア人民主連合(DUA)は共同で、内閣不信任案を議会に提出した。
DPS等は共同声明において、不信任案提出の理由は「現政権が、選挙時の公約であった司法改革、法の支配強化、EU加盟プロセスの強化、経済政策、保健医療制度の再編といった優先課題において結果を出しておらず、また、アバゾビッチ(Dritan Abazovic)首相は国内の学術研究機関や専門家の意見を無視し、セルビア正教会との関係を前面に押し出すことで、国内の緊張を高め、欧州統合という課題に費やすべき時間を無駄にしてきた」ことだと述べている。
モンテネグロでは、2006年の独立以来、DPSを中心とした政権が30年近くに渡り継続してきたが、2020年8月に行われた議会選挙においてDPSが議会の過半数を失い、それまでの野党政党の連立によって初の非DPS政権であるクリボカピッチ(Zdravko Krivokapic)政権が誕生していた。しかし、セルビア正教会との関係等の重要課題を巡る意見の不一致から連立政権内での軋轢が深刻化し、今年2月には、クリボカピッチ政権の一角であった統一改革運動(URA)が内閣不信任案を提出する事態となった。この不信任案がDPS等の賛成によって可決され、その後、DPS等の支持を得て、クリボカピッチ政権時の副首相を務めていたアバゾビッチURA党首が新首相に任命された。
少数与党連立政権であるアバゾビッチ政権は議会において過半数を維持できておらず、議会内最大政党であるDPSからの閣外協力を得てこれまで政権運営を行ってきた。一方で、クリボカピッチ前政権の中核であったセルビア系政党の民主戦線(DF)は、クリボカピッチ政権に対する不信任案を提出したURAを強く非難しながらも、基本合意は支持しており、今回提出された不信任案の可決可能性は、DFがどのような態度を取るかによって大きく左右されると見られている。
アバゾビッチ首相は、DPS等が強く反対するセルビア正教会との合意文書署名を推し進め、事前の発表無しに合意文書の署名を3日に実施した。
これに対しDPSのジュカノビッチ(Milo Djukanovic)党首は、アバゾビッチ首相が合意文書に署名した場合、政権への協力を取り止めるとの意向を表明していた。
この記事へのコメントはありません。