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セルビア政府、独自の大規模言語モデル(LLM)開発へ:デジタル主権の確立と経済競争力の強化を目指す

1月14日、セルビア政府IT・電子政府局(Kancelarija za informacione tehnologije i elektronsku upravu)のヨヴァノヴィッチ(Mihailo Jovanović)局長と、セルビア商工会議所(Privredna komora Srbije,PKS)のチャデジュ(Marko Čadež)会頭は、セルビア語に特化した独自の大規模言語モデル(LLM)の開発に関する協力協定を締結した。セルビア政府プレスリリースによれば、このプロジェクトは、教育、医療、司法、文化、公的機関、および商業活動における人工知能(AI)の活用を促進し、国家としてのデジタルおよびAI主権を確保することを目的としている。

ヨヴァノヴィッチ局長は、この取り組みがセルビア語、キリル文字、そして国家のアイデンティティをグローバルなデジタル空間において正しく反映させるために不可欠であると強調した。独自モデルの開発により、データ、規格、および倫理原則に対する完全な制御が可能になると同局長は述べた。このプロジェクトには、国立図書館、大学図書館、セルビア国営放送(Radio-televizija Srbije, RTS)、ヴォイヴォディナ放送(Radio-televizija Vojvodine, RTV)、およびAI開発研究所(Institut za razvoj veštačke inteligencije)などの主要機関が参画する見通しである。ヨヴァノヴィッチ局長は、19世紀における書籍の印刷が果たした役割を、21世紀においてはAIが担うことになると述べ、セルビア語の多様な方言や語彙を未来に継承するための投資であるとの認識を示した。

経済的側面において、チャデジュ会頭は国内向けLLMが企業にもたらす多大なメリットを指摘した。具体的には、AI導入の障壁を下げ、開発コストの削減や生産性の向上、カスタマーサポートの自動化、データに基づく迅速な意思決定が可能になるとしている。エネルギーや農業分野での資源管理の最適化、金融分野でのセルビア語による高度なデジタルアシスタントの導入、医療分野での診断支援やデータ管理、さらには司法分野における正確な用語使用の標準化など、幅広い分野での活用が期待されている。特に中小企業にとっては、マーケティングや営業の自動化を通じて国際的な競争力を高める好機になることが期待される。

今回のプロジェクトの基盤となるのは、中部クラグイェヴァツ(Kragujevac)の国家データセンターに設置されている高度なITインフラである。セルビア政府は2020年に同センターを開設し、2021年には米エヌビディア(NVIDIA)製のスーパーコンピュータを導入して国家AIプラットフォームとして運用してきた。

さらに、2025年には仏エヴィデン(Eviden)社と5,000万ユーロ規模の契約を締結しており、2026年中にさらに2台のスーパーコンピュータを増設する計画となっている。

セルビアの電子政府化成熟度は、世界銀行(World Bank)の指標で欧州2位、世界6位と高く評価されており、オックスフォード大学によるAI準備度指数でも世界の上位20%に位置している。こうした実績を背景に、セルビアは自国のITソリューションの海外展開も進めており、現在はウズベキスタンに対し、新生児登録システム「eBeba」の提供に向けた交渉を行っている。チャデジュ会頭は、独自のLLM開発と5Gネットワークの導入が、セルビアを地域的なイノベーションハブおよび技術輸出拠点として位置づける重要な転換点になるとの見解を述べた。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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