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コソヴォ議会、新内閣の承認を再び否決-10か月に及ぶ政治的膠着の末、再選挙実施が確実な状況に

11月19日、コソヴォ議会は新政府樹立に向けた投票を行い、コニュフツァ(Glauk Konjufca)氏を首相とする内閣案を否決した。これにより、憲法規定に基づき、オスマニ(Vjosa Osmani)大統領が前倒し総選挙の実施を宣言することがほぼ確実な状況となった。コソヴォでは今年2月の総選挙以来、正式な政府が存在せず、暫定政権による国政運営が10か月に渡って継続してきたが、結果として新政権成立を見ること無く再選挙(前倒し総選挙)へ至ることになる。

最大与党である自己決定運動(Lëvizja Vetëvendosje: LVV)から第2の首相候補として指名されたコニュフツァ氏は、組閣期限(首相候補者として指名後2週間)の最終日であるこの日、議会に内閣名簿と施政方針を提示した。しかし、コソヴォ議会プレスリリースによれば、定数120議席の議会において、新内閣発足に必要な過半数である61票に対し、賛成票は56票にとどまり、反対53票、棄権4票という結果に終わった。

LVVによる組閣の試みは、10月26日に同党党首であるクルティ(Albin Kurti)暫定首相が過半数の支持を得られず失敗したことに続く2度目の挫折となる。LVVは今年2月の総選挙で比較第一党となったものの、単独過半数を維持できず、連立協議も不調に終わっていた。

コニュフツァ氏は議会演説において、新政府がなければ同国の危機の深化は確実であると警告し、2025年が議会と政府という憲法上の機関を設立するための試みに費やされた「失われた年」として記憶されるだろうと述べた。また、提示された閣僚名簿では、クルティ氏が第一副首相兼外務大臣として名を連ねており、インフラ大臣の交代を除き、前回クルティ氏が提示した案とほぼ同様の構成であった。

出典:KTV – KOHAVISION

野党各党は、今回の投票を「茶番」と断じ、LVVの政権運営能力と妥協の欠如を批判した。最大野党であるコソヴォ民主党(Partia Demokratike e Kosovës:PDK)のイスマイリ(Uran Ismajli)議員は、今回の議会招集は首相選出のためではなく、野党に責任を転嫁するためのものだと指摘し、コニュフツァ氏はクルティ氏を副官とする内閣で真の首相になれるとは自身でも信じていないだろうと述べた。

出典:KTV – KOHAVISION

コソヴォ民主同盟(Lidhja Demokratike e Kosovës: LDK)のアブディジク(Lumir Abdixhiku)党首は、クルティ氏をドン・キホーテに例え、自ら作り出した平行現実の中で架空の敵と戦っていると痛烈に批判し、現実的な経済・外交問題への対処が欠如していると指摘した。

出典:KTV – KOHAVISION

さらに、セルビア系政党である「セルビア人リスト(Srpska lista: SL)」のシミッチ(Igor Simić)副党首は、クルティ氏主導の政策は独裁的であり、アルバニア人やセルビア人だけではなく、ボシュニャク人やロマ人などの少数民族もクルティ政権を支持していないとして、新政権を支持しない姿勢を改めて示した。

出典:Insajder Video

同日午前には、新政府選出に先立ち、2026年度予算案や国際協定の批准、公共放送RTKの予算承認などを審議する臨時国会も招集されていた。しかし、コソヴォ民主党、コソヴォ民主同盟、コソヴォ将来同盟(Aleanca për Ardhmërinë e Kosovës: AAK)などの野党議員がボイコットしたため、定足数不足により流会となった。

クルティ暫定首相およびムラティ(Hekuran Murati)暫定財務は、議会の機能不全により、EUの「西バルカン成長計画」に基づく資金や世界銀行からの融資など、数億ユーロ規模の国際資金を失うリスクがあると警告している。

憲法の規定により、大統領は40日以内に早期総選挙を実施しなければならない。コニュフツァ氏は、現在の政治的分断が続けば、来年3月に任期満了を迎えるオスマニ大統領の後任選出においても合意形成が困難となり、さらなる政治的混乱が予想されると懸念を示している。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock AI gnenerated)

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