
モンテネグロ、トルコ国民へのビザ免除措置を早期再開へ-誤情報による外国人排斥運動への対応とEU共通ビザ政策への適合が課題
12月1日、モンテネグロのイブラヒモヴィッチ(Ervin Ibrahimović)副首相兼外務大臣は、一時的に停止されていたトルコ国民に対する短期滞在査証(ビザ)免除措置について、近日中にこれを再開させる意向を表明した。この方針は、モンテネグロ議会で開催された外交政策に関する公聴会および公共放送RTCGへの発言を通じて明らかにされた。
モンテネグロ政府は10月末、首都ポドゴリツァのザビェロ地区で発生した傷害事件を契機に、トルコ国民に対するビザ免除を停止する措置を講じていた。
当初、モンテネグロ警察当局は、地元住民が襲撃されたこの事件の犯行グループを「トルコ国籍」であると発表した。この情報は即座に拡散され、ポドゴリツァ市内ではトルコ人移民や外国人排斥を叫ぶ抗議デモが発生し、一部では暴徒化した市民が特定の建物を捜索するなど、「外国人嫌悪(ゼノフォビア)のパレード」と形容されるほどの社会的混乱を招いた。
しかしその後、警察当局は捜査情報を訂正し、実際の襲撃犯はアゼルバイジャン国籍であったことを明らかにした。議会の公聴会において、野党「市民運動(URA)」党首のアバゾヴィッチ(Dritan Abazović)前首相は、治安当局による初期段階での誤った犯人特定が特定の民族に対する憎悪を煽ったとして、政府の治安部門の失態を厳しく追及した。また、最大野党「社会主義者民主党(DPS)」のニコリッチ(Andrija Nikolić)議員も、国家機関による誤情報の流布が両国関係を悪化させたと批判した。
この一時的なビザ導入措置は、経済面でも即座に悪影響を及ぼした。ターキッシュ・エアラインズ(Turkish Airlines)およびペガサス航空(Pegasus Airlines)は、需要減退を理由に両国間を結ぶフライトのキャンセルや減便を余儀なくされた。トルコは2025年1月から9月までの期間においてモンテネグロへの最大の外国直接投資(FDI)元であり、国内には1万2,500社以上のトルコ系企業が存在すると報じられていることから、ビジネス界からも懸念の声が上がっていた。イブラヒモヴィッチ外相は、自身の所属するボシュニャク党(BS)の閣僚はこのビザ導入決定に賛成票を投じていないとしつつも、政府としてトルコとの友好関係を再強化する姿勢を強調した。
一方で、イブラヒモヴィッチ外相は、モンテネグロの長期的なビザ政策について、EU(欧州連合)加盟交渉における「第24章(正義、自由、安全)」の要件を満たすため、2026年の第3四半期末までにEUのビザ政策と完全に整合させる義務があると言及した。これは、現在はモンテネグロへの入国にビザを必要としないロシアを含む8カ国に対し、将来的にはEU基準に従ってビザ要件を課す必要があることを意味している。モンテネグロは2028年のEU加盟を目指しており、観光立国としての利益とEU加盟要件との間で難しい舵取りを迫られている。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)






































































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