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コソヴォ議会、憲法裁が定めた期限までに設立ならず機能停止へ-再選挙は不可避か

7月26日夜(現地時間)、コソヴォ議会は議長を選出するための54回目となる試みにも失敗し、憲法裁判所が定めた期限内に議会を設立できなかった。これにより、憲法裁の決定に基づき議会の機能は完全に停止され、政治的空白の解消は司法の判断に委ねられるという異例の事態に陥った。

過半数を失った与党と妥協を拒否する野党

今年2月の総選挙で48議席を獲得し第1党となった「自己決定」運動(Vetëvendosje, LVV)は、膠着状態を打開するため複数の手を打ってきたが、いずれも実を結ばなかった。当初、LVVは自党のアルブレナ・ハジュウ(Albulena Haxhiu)氏を議長候補として一貫して指名したが、野党の協力が得られず、公開投票での選出は繰り返し失敗した。

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次善の策として、LVVは5月から秘密投票での選出を模索した。しかし、そのための投票委員会を設置する動議すら、野党の反対により否決され続けた。並行して、LVVを率いるアルビン・クルティ(Albin Kurti)暫定首相は、3議席を持つ社会民主イニシアティヴ(NISMA)など少数政党との連携交渉を続けた。しかし、NISMAのファトミル・リマイ(Fatmir Limaj)党首が政権協力の見返りに自身を議長職に就けるよう要求するなど、交渉は利害の対立から前進しなかった。LVVの試みはことごとく壁に阻まれ、過半数形成への道筋を描けないまま時間切れとなった。

この失敗を受け、7月27日より憲法裁判所が命じた一時的措置が発効した。これは、8月8日までの間、議員によるいかなる意思決定や行動をも禁じるものであり、これによって議会活動は一時的に完全に停止される。この期間中に、憲法裁判所が現在の政治的な行き詰まりを打開するための判断を下すものと見込まれている。

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2014年憲法裁判決の呪縛

この根深い対立の背景には、2014年の憲法裁判所判決がもたらした構造的な問題がある。当時、総選挙で勝利したコソヴォ民主党(PDK)が過半数を確保できなかった際、対立する政党連合が議会で多数を形成し、独自にコソヴォ民主連盟(LDK)のイサ・ムスタファ(Isa Mustafa)氏を議長に選出した。

しかし憲法裁判所は、この過半数の意思による選出を「無効」と判断した。その判決は、「議長候補を指名する独占的権利は、総選挙で最多の票を得た政党にのみ属する」という極めて限定的な解釈に基づいていた。この判断は、議会制民主主義における「議会の多数派が立法府を主導する」という基本原則よりも、選挙の形式的な勝者の権利を優先させる結果を招いた。

この判決は、その後のコソヴォ政治に重大な影響を及ぼし続けている。この憲法裁判決以降、最多得票政党は過半数に満たなくても判決を盾に議長職を要求し、一方の野党側はこれに反発して一切の協力を拒否するという構図が度々繰り返され、選挙後のコソヴォにおける政治的膠着のパターンとして定着しつつある。2017年、そして今回の危機も、この構造から生まれた必然的な帰結であったと言える。

唯一の打開策は再選挙か

議会の停止は、コソヴォが重要視する欧州連合(EU)からの資金援助や欧州評議会への加盟プロセスに深刻な影響を与えることが懸念される。政治家による党利党略が招いた機能停止状態が長引く中、コソヴォの将来には一層不透明感が漂っており、政治不信が極限まで高まる中、コソヴォ内外の専門家の多くは、この状況を脱する唯一の解決策は再選挙の実施だと見ている。

現地シンクタンクであるコソヴォ民主研究所(Democratic Institute of Kosovo, KDI)のエウゲン・ツァコリ(Eugen Cakolli)氏は、現地紙KOHAの取材に対し、新たな総選挙はもはや不可避であるとの見方を示した。同氏は、解決策がないまま開かれた最後の会期を「4月15日以来、最も茶番じみた試みである」と厳しく批判し、「LVVと野党の双方が真摯な努力を見せず、行き詰まりを解決するよりも市民の前で印象操作をしようとしたに過ぎない」と述べ、与野党双方の責任を指摘した。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock AI generated)

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