アルバニアとEUが本格的なEU加盟交渉入り:最重要政策クラスターの交渉が開始される
10月15日、EUとアルバニアは、ルクセンブルクにおいてアルバニアのEU加盟交渉に関する第2回政府間会議を開催し、EUが定める最重要政策分野を含むクラスター1の交渉を開始した。
会合後の共同記者会見には、アルバニアのラマ(Edi Rama)首相、EU議長国ハンガリーのシーヤルトー(Peter Szijjarto)外務・貿易大臣、ヴェルヘリ(Olivér Várhelyi)近隣諸国・拡大担当欧州委員が出席した。
アルバニア政府プレスリリースによれば、ラマ首相は、「クラスター1の交渉開始はアルバニアのEU加盟に向けた歩みにおいて歴史的な瞬間である」と述べ、アルバニアのEU加盟プロセスが新たな段階に入ったと指摘した。ラマ首相はまた、アルバニアのEU加盟交渉を後押しするハンガリー政府の支援に対する謝意を表明し、西バルカンのEU統合の重要性を強調したうえで、EU基準への適合に向けた国内改革へのアルバニアのコミットメントを確認した。
シーヤルトー外務・貿易大臣は、「西バルカン地域の安定と繁栄にとってEU加盟は不可欠であると同時に、EUにとっても、現在の地政学的条件の下で、EU拡大の重要性はかつてなく高まっており、西バルカンを迎え入れること無しにはEUは完成しない」と述べた。シーヤルトー大臣はまた、アルバニアの改革努力に対するハンガリーからの支援を改めて約束し、その一環として、ハンガリー政府がアルバニアの公務員50名に対するキャパシティ・ビルディングのための研修機会を提供すると表明した。
ヴェルヘリ欧州委員は、アルバニアのEU加盟交渉の進展を歓迎したうえで、「クラスタ-1には、法の支配、基本的人権、民主主義といったEUの根本を成す価値に関わるチャプターが含まれており、これらの分野におけるアルバニアの改革努力に期待している。EU加盟プロセスは、アルバニアとEUの双方に利益をもたらすものである」と述べた。
駐日EU代表部の説明によれば、EUへの新規加盟に際して、新規加盟国側はEUが設定している3つの基準(政治的基準、経済的基準、法的基準)を満たす必要があるが、西バルカン諸国のEU加盟交渉においては、「チャプター」と呼ばれる35の個別政策分野ごとに交渉が行われており、これまでにモンテネグロとセルビアがチャプター別交渉を開始している。しかし、欧州委員会は2020年にこの交渉方式を改訂しており、「改訂拡大方式(revised enlargement methodorogy)」と呼ばれる現在の交渉方式においては、複数のチャプターをひとまとめにした「クラスター」毎に交渉の開始と妥結を図ることになっている。アルバニアは、改訂拡大方式を全面的に適用する最初のケースとなった。
EU理事会プレスリリースによれば、クラスター1には、EUが最も重要視するチャプター23(司法・基本的権利)及び24(正義・自由・安全)に加え、チャプター5(公共調達)、18(統計)、32(財政規律)が含まれており、EUはこのクラスターを「ファンダメンタルズ」と呼んで特に重視している。
クラスター1の交渉開始に際し、EU外相理事会は、アルバニアとのEU加盟交渉におけるEUとしてのクラスター1の交渉ポジションを全会一致で採択しており、そこでは、アルバニアの司法改革の取り組みを評価しつつも、特に汚職対策の分野においてアルバニアには一層の努力と成果が必要であると指摘されている。
これまで、アルバニアのEU加盟交渉の進展は北マケドニアの加盟交渉と同じタイミングで進展してきており、両国は事実上同じグループとしてEUから扱われてきていた、しかし、歴史認識や国内少数民族の扱いを巡り、EU加盟国であるブルガリアが北マケドニアの加盟交渉進展を実質的にブロックする状況が現在の続いており、アルバニアの加盟交渉もそれに引きずられる形で停滞していた、
今年7月にEU議長国となったハンガリーは、アルバニアと北マケドニアの加盟交渉を分離してアルバニア単独で加盟プロセスを進める方針を表明しており、他のEU加盟国もこれに賛同したことで、アルバニアの加盟交渉が進展することになった。
(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)
この記事へのコメントはありません。