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モンテネグロ政府がJERAとのエネルギー協力覚書締結に向けた交渉方針を採択-LNGターミナル建設計画における実現可能性調査を実施へ

9月4日、モンテネグロ政府は、日本の大手電力会社であるJERA(JERA Co., Inc.)との間で、液化天然ガス(LNG)ターミナルおよびガス火力発電所の建設に関する協力覚書(MoU)を締結するための交渉基本方針を採択した。この動きは、モンテネグロのエネルギー安全保障を強化し、西バルカン地域におけるエネルギーハブとしての地位を確立するための戦略的な一歩と位置づけられている。

モンテネグロ政府が採択した交渉基本方針によれば、JERAはモンテネグロ国内におけるLNGターミナルおよび付随するガス火力発電所の開発、調達、建設、運営、維持、そして資金調達に関する包括的な実現可能性調査を実施する予定とされている。モンテネグロ政府によると、この調査はプロジェクトに関する将来の戦略的決定や、最終的に法的拘束力を持つ契約を締結する上で極めて重要なステップとなる。また、国際開発銀行、輸出信用機関、商業投資家などを巻き込んだ最適な資金調達・パートナーシップのモデルを定義するための基礎となる。

モンテネグロは、アドリア海に面した港湾都市バール(Bar)において、LNGターミナルとコンバインドサイクル火力発電所の建設を数年前から検討してきた。2023年には、当時の政権が米国企業2社と同様のプロジェクトに関する覚書を締結したが、環境保護団体や市民、バール市等地方自治体からの強い反対に遭い、計画は停滞していた。

JERAは、2015年に東京電力と中部電力の燃料・火力発電部門を統合して設立された日本最大の発電会社であり、LNGの分野で世界トップクラスの取扱量と専門知識を有する。本年5月に訪日したスパイッチ(Milojko Spajić)首相は、JERAの代表者と会談した際、同社が運営する富津火力発電所の発電容量(5.16GW)がモンテネグロの年間エネルギー需要の5倍に相当する規模であることに言及し、その技術力と経験に期待を示していた。

モンテネグロ政府は、今回のJERAとの協力が実現すれば、日本との二国間関係における質的な飛躍につながると捉えている。政府文書によれば、両国関係は伝統的に友好的であり、今回の協力はこれまでの開発・技術協力の枠組みを超え、戦略的なインフラ投資への道を開くものと評価されている。両国間の査証免除や、計画されている在モンテネグロ日本大使館の開設も、二国間関係の深化を象徴するものとして歓迎されている。

この覚書自体は、一部の条項を除き法的な拘束力を持たないものの、両者が排他的に協力し、プロジェクトの実現に向けて誠実に協議を進めることを確認するものとされている。今後実現可能性調査が実施された場合、その結果、モンテネグロのエネルギー政策と脱炭素化に向けた取り組みの将来を大きく左右することになると見られる。

(アイキャッチ画像はバール港、出典:Shutterstock)

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