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セルビア航空管制スト、欧州域内便に影響拡大-ライアンエアーがEUに緊急対策を要求

8月22日、アイルランドの格安航空会社ライアンエアー(Ryanair)は、セルビアで続く航空管制官のストライキが欧州連合(EU)の航空網に深刻な混乱をもたらしているとして、欧州委員会(European Commission)に対し緊急の対策を講じるよう強く求めた。

ライアンエアーの声明によると、ストライキが開始された8月20日と21日のわずか2日間で、同社のフライト99便に遅延が発生し、約17,800人の乗客が影響を受けた。同社が特に問題視しているのは、ストライキの影響がセルビアを発着する便にとどまらず、セルビア領空を通過するだけの「上空通過便(overflights)」にも及んでいる点である。

ライアンエアーの広報部長であるカーワン(Jade Kirwan)氏は、「セルビアを発着するわけでもなく、単にセルビア領空を通過するだけのEUの乗客が、不必要な混乱を強いられることは受け入れがたい」と述べた。同氏によると、イタリアやスペイン、ギリシャなど他の多くの国では、国内で航空管制のストライキが発生した場合でも、上空通過便の運航は保護される法制度が整備されているが、セルビアでは同様の措置が講じられていない。これにより、例えばポーランドからギリシャへ、あるいは英国からトルコへ向かう便など、セルビアとは直接関係のない多くのEU市民の旅行計画に支障が出ていると批判した。

この事態を受け、ライアンエアーは欧州委員会のフォン・デア・ライエン(Ursula von der Leyen)委員長に対し、各国のストライキ中に上空通過便の運航を保護するよう、EU全体の航空交通管理システムを緊急に改革することを要求した。同社は声明の中で、同委員長の名前をもじって「また遅延のウルスラ(Ursula von “Derlayed-Again”)」と揶揄するなど、極めて強い口調で欧州委員会の迅速な対応を促している。

EUでは2006年に、航空交通管理の非効率性を解消し、空域を統合することを目指す「単一欧州空域(Single European Sky, SES)」構想が打ち出されたが、各加盟国が自国領空の管理権限を手放すことに消極的であるため、改革は遅々として進んでいないのが現状となっている。今回のセルビアでのストライキは、国境を越えて相互に連結された欧州の航空網が抱える構造的な脆弱性を改めて浮き彫りにする形となった。

(アイキャッチ画像出典:Wikimedia commons Public Domain)

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