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セルビア全土で反政府デモ参加者と政権側の衝突継続-負傷者・逮捕者多数

8月14日、前日から引き続き、セルビア全土での反政府デモは暴力的な衝突へとエスカレートし、首都ベオグラード(Beograd)や第2の都市ノヴィ・サド(Novi Sad)をはじめとする全国90カ所以上の都市でデモ隊と治安部隊が衝突、多数の逮捕者・負傷者を出す事態となった。

この一連の抗議活動は、2024年11月にノヴィ・サド駅でコンクリート製の天蓋が崩落し16人が死亡した事故に端を発する。当初、学生らが主導し、事故の背景にあるとされる汚職の責任追及を求めていたが、政府が要求に応じなかったとして、2025年5月からは早期の議会総選挙の実施を要求する運動へと発展していた。今週に入り、北西部の町ヴルバス(Vrbas)でヴチッチ(Aleksandar Vučić)大統領の支持者と反対派が衝突し、デモ参加者に負傷者が出たことをきっかけに、抗議活動は全国規模で一気に激化した。

出典:DW News
出典:Al Jazeera English

14日から15日にかけて、ベオグラード、ノヴィ・サド、ニシュ(Niš)、クラリェヴォ(Kraljevo)など全国の都市で、与党セルビア進歩党(Srpska napredna stranka, SNS)の事務所周辺を中心にデモが行われた。ベオグラード中心部では、SNS本部に近づこうとするデモ隊に対し、多数の機動隊が催涙ガスを使用するなどして鎮圧を図った。ソーシャルメディア上には、警察がデモ参加者を追跡し、殴打する映像も拡散されている。ノヴィ・サドでは、デモ隊によってSNSの事務所が破壊される事態となった。また、野党「自由・正義党(Stranka slobode i pravde, SSP」のミトロヴィッチ(Peđa Mitrović)国会議員が覆面姿の集団に襲われ頭部に負傷した。

連日の衝突を受け、マツット(Đuro Macut)首相は15日、この事態を「フーリガンによる国家への直接的な攻撃」と強く非難し、法に基づき断固として対応する姿勢を表明した。ダチッチ(Ivica Dačić)内務大臣は、14日までに少なくとも42人の警官が負傷し、15日夜にはベオグラードで新たに37人を逮捕したと発表。警察は秩序を回復するために必要な場合にのみ実力を行使したと主張した。

一方、公共放送RTSの番組に出演したヴチッチ大統領は、この騒乱の背後に外国からの資金提供があると改めて主張したが、具体的な証拠は示していない。同大統領はこれまで、早期選挙の可能性を否定しないものの、その時期は「街頭の声によって決められるものではない」との立場を崩していない。

出典:RTS Sajt-Zvanicni Kanal

一方でデモ参加者側は、警察が過剰な武力を行使して与党支持者を保護していると非難しており、双方の主張は真っ向から対立している。議会の通常選挙及び大統領選挙は2027年に予定されているが、ヴチッチ政権は政権発足以来最大規模となる抗議活動に直面し、厳しい局面に立たされている。

(アイキャッチ画像出典:Shutterstock)

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